Masato

サンクチュアリ -聖域-のMasatoのレビュー・感想・評価

サンクチュアリ -聖域-(2023年製作のドラマ)
4.3

話題となっていたネトフリオリジナルの日本ドラマ。外資系なので角界に忖度せずズケズケと入り込めるおかげで面白くなっている。意外にもストレートなスポ根ドラマ。

リアルな問題を描きつつも、基本的にはロッキーよろしくなどん底の主人公、そして問題を抱えたそれぞれの力士たちが成り上がりを目指して死闘を繰り広げていくものとして非常に良く出来ていて純粋に胸がアツくなる。ザッツスポ根。

またコマ落としを使った迫力のある試合シーンや万国共通に相撲のダイナミックさが伝わるスローモーションの多用も素晴らしい。一瞬が勝敗を決める相撲だからこそ、一手一手の重みをちゃんと的確に表現していて良いし、なにより漫画的(最近ではクリード3でも使われていた)で良い。

角界の旧体質の部分は批判し、元来相撲にある面白さや日々鍛錬を重ねる力士たちへのリスペクトは忘れず、冷笑的にならずに情熱的に描くのは素晴らしい。

今や八百長や暴行事件、女性蔑視など名誉は地に落ちている相撲業界に完全無視のヤンキー力士が殴り込むことで、礼節や伝統を重んじる文化が皮肉に感じられる現況をさらに煽る形で皮肉っているのが良い。つまり、礼節を語れば語るほど何もしなくても自然と皮肉表現となるのが良い。

そこかしこに男性による女性蔑視の表現が含まれており、男性優位社会への批判が詰め込まれていると同時に男性は馬鹿であるというようなコメディリリーフとしても活用していて絶妙だと思う。

また、ネグレクトや誹謗中傷、承認欲求、カルト宗教なども含まれていて色んな社会の闇を詰め合わせている。それを各々のキャラや力士の闘志の裏に存在するものとして上手く描けていて、ただ相撲を描くのみならず、そこを起点として日本の闇を描こうとしているところも良い。


残念だなと思うのは、忽那汐里演じる記者のキャラの描き方。型破りな主人公と似た存在であるということで主人公と同じような生意気な感じでデフォルメされたキャラなのは理解できるが、本作の肝でもある角界の汚点の描写を担う社会的な立場のキャラを幼稚な感じとしてデフォルメするのは如何なものかと感じた。正義感の強い若い人物をまるで子どもじみた反抗期的な幼稚なキャラとしてしか描けないのは正直辛いところはある。アメリカ育ちだからどうとか、ちょっとキツイ。

結局そういう人を子供じみてるとバカにしてるようにしか見えない。角界の闇を抉る作品で正義的な要素があるはずの本作がそういった人を悪意は無いにせよ馬鹿にするようなデフォルメはしてはいけない。

角界ではマイノリティの立場である女性であるということを鑑みてなおさら駄目。口うるさい女というような浅くて良くないステレオタイプな人物像に収まってしまっている。他の社会性のある描写が良く出来ているがために、このキャラだけ異様に不自然な描写が多くて気になった。

あと母親が別人くらいに豹変しすぎてリアリティに欠ける。


記者の国嶋さんには相撲を好きになるだけでなく、好きだからこそ古臭い旧体質のところを批判していってほしい。小瀬がどんどん角界の中心部へと進んでいくに連れて本元の異常さを小瀬と国嶋は知っていく…という展開に期待。


中途半端に終わるのでどこまで切り込んでいけるのかは分からないが、シーズン2ではもっと切り込んでいって欲しいし、そのポテンシャルはありそうなので期待。もちろんスポ根もこのままを維持して。
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