喜連川風連

母性の喜連川風連のレビュー・感想・評価

母性(2022年製作の映画)
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鑑賞後、かなりおぞましい映画だと思ったが、このあたりのセリフにそれが集約されている。

「愛されるためには喜ばれることをしなきゃならないと思ってたんです」
「自分の満足より他人の満足を優先したい」

いわば、戸田恵梨香演じる母の持つ歪んだ愛は母性というよりは他者への恐怖心の現れであり、アイデンティティを他者に委ねることで自分を確立してきた人の愛だ。

相手の望む姿を演じるという意味では太宰治の人間失格にも通じる。

演出においても、愛を求める戸田恵梨香の宙に浮いた感じが如実に表現される。

例えば、戸田恵梨香は、綺麗な言葉遣いが強要され、お嬢様感が画面から溢れる。言葉が他者にとって不快なものにならないように生きる彼女をわかりやすく演出している。

ただ、セリフが小説をそのまま切り出してきたかのような長いものが多く、演出も説明的であまり好きではなかったものの、原作の持っていたテーマの一端に触れられて良かった。

ラスト、爽やかな永野芽郁の表情とJUJUの曲で煙に巻こうとしているが、決してハッピーエンドではないし、正解・不正解思考に囚われた「親子の地獄は続くよ、どこまでも」と思ってしまった。

複雑なテーマをぶち壊すように安易にセリフで「母性は後天的だ」と言ってみたり「女は2つの存在に分けられる」も言う必要もないような。。

母性というテーマを映画スタッフが消化しきれてない感が強く、女性監督が撮るべきだったように思う。
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