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RRRのlotusのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.5
壮大なるインド音楽とアクション、CGに彩られた一大叙事詩。
インド映画史上最大の製作費、97億円もうなづける。

誰もが期待するインド映画の想像をさらに上回るど迫力アクションと、ワーグナーのオペラをさらに壮大にしたような(さらに壮大にできるんだね。。)スケールの音楽、とにかく圧倒されて、度肝を抜かれてあまりものスケールにちょっと笑ってしまう。

海外ではこの音楽に合わせて踊り出す人もいるらしいが、ここ日本では終演後、どこからともなく控えめに拍手が沸き起こった。控えめではあったが、舞台ではなく映画館で拍手が湧き起こるシーンに立ち会ったのは初めてだ。

ストーリーをざっくりいうと、悪の大英帝国に大事な人を奪われた2人のインド人の男が、時に反目する時期もありながら、お互いの力や意思を認め、共に立ち向かっていくらというのが本筋。(あらすじ自体はかなりシンプル)

個人的に興味深かったのは、主人公の1人、ビームが好意を寄せるイギリス人女性に招かれてパーティに行ったとき、それを心よく思わないイギリス人男性が、お前はどうせサルサもフラメンコも踊れないだろう。お前らには文化なんてないんだから、と煽る。
その言葉を受けて、パーティに一緒に来ていたもう1人の主人公、ラーマが、いや、俺たちにだって文化はある。ナートゥを知っているか?と言って踊り出す。(このシーンでの楽曲がアカデミー賞にノミネートされている)

ビームとラーマはビートの効いた音楽に合わせて激しく踊り始める。それを前のめりで聞いて一緒に踊り出すのは、イギリス人女性達である。男はぶぜんとして動かない。

このシーンを見ていて、いろんな「文化」を楽しめるのはなぜか女性なんだよな、と思った。ビートルズの初期は女性のファンが多かったことは知られているが、男性は評価の定まっていない「文化」を楽しむ習慣がないように思う。

踊り始めるイギリス人女性に対して、よせ!という感じだったイギリス人男性達が最後は一緒に踊り出す。しかし、ダンスバトル、という形式で一緒に踊り出す。バトルになると、イギリス人女性達は鑑賞する側、応援する側にまわっている。

このシーンはどちらかというと、植民地主義批判として作られているが、(イギリス人男性が「文化というのは白人の文化だけが文化なのだ」、と言った時に、バックバンドの一員としてその場にいた黒人の不服な表情が映る。)ジェンダーと文化について考えるのに興味深いシーンだと思った。

アカデミー賞にノミネートされているのは上記のシーンの音楽だが、終盤でラーマとビームが大英帝国に立ち向かうシーンでかかる音楽が実に壮大で神話的ですらあるので、こちらも素晴らしい。

RRRというタイトルだと素通りしてしまう人も多そうだけど、この映画はぜひ映画館で、そして可能であればぜひドルビーシネマで見て欲しい。
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