Cisaraghi

ナイジェリアン・クリスマス 〜愛しの花嫁を探して〜のCisaraghiのレビュー・感想・評価

-
ナイジェリアでは高名らしいクンル・アフォラヤン監督作品。とはいえ、少しも肩の凝らない娯楽作品で、ストーリーはたわいのない型通りのラブコメでノリウッドあるある。でも、何しろ一人一人が強烈に個性的だし、ナイジェリアの人間・風俗・文化を見るだけでも面白い。今回はまた特にコスチュームが悉く素晴らしい!今アフリカンプリントは世界的に人気らしいが、様々なプリント、様々なデザインの服が繰り出されて、まるでファッションのサンプル見本、ということは映画自体がファッションショーの役割を果たしているようなもの。意図してかどうかはわからないけど。

登場人物の中では、童顔の弾けるような明るい笑顔のカネンがイチオシかな。最初ちと情けない感じはあったけど、ちゃんと言うべきことを言った堅実な次男オビも推せる。(オビだけスモックのようなプリント柄の服を着てるのは何故?)アフリカンとしてはやせぎすで、茶×オレンジ系のシックなプリントの服がよく似合うアジケは、保守的で敬虔なクリスチャンらしいのはわかるけど、キャラがイマイチ掴みかねた。しかし、ホントにウゴでいいんですかね?三兄弟の中では一番感じがいいのに、何故かなおざりにされている末弟チケ。仕事のできる美人キャラ・ヴェラ姉さんの心変わりの訳もよくわからないけど、とりあえず迫力のbombshell bodyとファッションは強烈。

この手のファッショナブルなノリウッドコメディとして異色なのは、珍しくスラム地区ムシンが登場すること。ここで教会婦人部の富裕なおば様方(この方たちのお召し物がまた超ゴージャス!)によるチャリティーのクリスマスガラが開かれるためだが、画面に映るムシンは明るくサラッと描かれてはいるものの、慣れない目にはなかなかに衝撃的だった。ナイジェリアでは人口の¼がトイレのない生活をしているそうなので、推して知るべし。でも、そのクリスマスガラの何と派手々々で独特で楽しそうなこと!アフリカ柄とクリスマス柄を掛け合わせるとこんなのが生まれるんだ~!的な初めて見る意匠の斬新さ、アメリカの黒人音楽ともまた少しノリが違う、独特のリズムに乗って歌われるクリスマスキャロル、何かと言えば話に持ち出される国民食ジョロフライスと目新しいものばかり、これだからノリウッド映画はやめられない。

アジケはスラム地区ムシンのコミュニティ出身で、三兄弟の実家はラゴスでも有数の高級住宅地イコイにある。彼等の間には格差があるということになるのかもしれないが、特にそれが問題として描かれてはいなかった。そもそもアジケが何をして生計を立てているのかよくわからない。登場人物の職業属性をはっきり描かないのもノリウッドあるあるのように思える。
 (追記)もう一度観たらアジケは修道女だとしっかり字幕に出ていた。不覚。シスター・アジケは、結婚できるということのようだ。
Cisaraghi

Cisaraghi