Rick

グリッドマン ユニバースのRickのレビュー・感想・評価

グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)
5.0
 グリッドマンという存在は、どこまでも特異である。パソコンが普及する前に生まれた、電脳世界を舞台にした特撮。20年以上の歳月を経てアニメ化、さらに数年後には続編まで制作。特撮というパッケージそのものさえも物語に昇華し、青春ものとしての完成度も非常に高いこのシリーズ。元々大ファンで、映画もものすごく楽しみにしていたし、個人的なハードルもエベレスト並みに高くなっていた。だが、誰がここまでやれと言った...。エベレストに登ろうとしていたら、成層圏を突き抜け宇宙まで連れて行かれた、そんな感じ。でもお祭り映画ってそういうことでしょ?とでも言いたげな見どころの釣瓶打ち、わんこそば的に拡大していくビックバン。もうグリッドマンを止められるやつは誰もいない。
 お祭り映画に違いはないし、きっと初見様置いてきぼり必至な作品なのだろうけども、根幹の部分はすごくウェルメイドだと思う。無限の命と有限な存在、強さと弱さ、日常と非日常。グリッドマンシリーズの良さを損なうことなく、奇天烈な規模になっている。そして、テレビシリーズにおける登場人物の選択や覚悟を無視することなく物語に反映させる手腕はアッパレの一言に尽きる。
 マルチバースものとして参照すべきはもちろん『スパイダーバース』だろう。あれがまさにスパイダーマンというキャラが集まる理由とその象徴性が優れていたと思うが、今作ではまさに「グリッドマン」だからこそ、そして日本の特撮だからこそ語れる物語にしている点は素直に賞賛すべきではないかと思う。
 またもやグリッドマンは退屈から救いに来てくれた。
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