Rick

哀れなるものたちのRickのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
 生まれ落ちた瞬間には何も知らない哀れなるものたちよ。汝、全てを体験せよ。喜びも悦びも、裏切りも信頼も、痛みも暴力も、怒りも失望も、知も優しさも、全てその身で経験せよ。懇切丁寧に「正解」や「世界」を教えてくれるものたちは、汝のことを支配したいだけにすぎない。汝のことを何も知らないのだ。故に、汝の自由意志に従い、どこまでもどこまでも行くのだ。側に置くため縋る心貧しきものたちを置き去りにして、信じて送り出すものたちにはキスをして、生と死をどこまでも満喫すると良い。仮初の貞淑や理性になど何の意味もないのだから。
 ここまで直接的に、暗喩的にエロスとタナトスを描く作品を他に知らない。エンドロールに至るまで、「何だかそれっぽく見える画」の連続で流石に笑ってしまうくらい。あまりにも変なものになんだこれはと圧倒されつつ、とてもわかりやすく真っ当な話運びに驚かされる。ウィレム・デフォーのシャボン玉は閑話休題。
Rick

Rick