ごりぞう

すずめの戸締まりのごりぞうのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

【ダイジンとは何者なのか】
 物語の牽引役となるネコの姿をした要石“ダイジン”。ソウタが要石となる運命を辿ったことを考えると、元は人間だった可能性はある。しかも、スナックのシーンでは、周りの人には人間の姿として映っている。過去に要石となった閉じ師であることは充分に考えられる。
 また、サダイジンは東京の地下に眠っている。関東大震災の鎮守であるなら、その頃から眠っていることになる。

【ソウタの父親はどこに?】
 閉じ師の家系であるにも関わらず、父親は登場せず、祖父が入院した状態で登場する。もし、ソウタの父親が3.11に閉じ師として東北に行って、そこで奮戦虚しく震災に巻き込まれてしまったとしたら、ソウタもスズメと同じ震災の犠牲者ということになる。

【映画好きなら、初見で終わったら残念】
 この作品、前作に続く新海監督の3作目という映画にとっては鬼門なのだが、案の定、賛否が割れている。
 否定的な意見で「主人公が一目惚れする」から「扉を開けて」「要石を抜く」という流れが理解・共感できないという。
 確かに、表面的なストーリーとしては唐突であるし、初見の主人公(スタート時では普通の高校生)の感情としては、「イケメンというだけで?」という非モテ先入観が、リアリティ無い!と断じてしまいそうになる。
 だが、ラストにこの「一目惚れ」こそが伏線であり、幼い頃の運命的な出逢いを見事に回収する結果となっているのだ。
 「君の名は。」でも使われた時系列トリックは、この作品では扉を通ることで「黄泉の国」や「過去の世界」へ繋いでいるのだ。
 余震が日常化した現代、3.11の体験をトラウマとしている主人公は、母親を喪い、12年を伯母に育てられ成長するわけだが。当事者以外が、そんな主人公に共感するというのは、なかなか難しくて当然であるし、だからといって「主人公理解できん」というのも残念な話のように思う。

 否定的な印象を持つ映画は、何故なのか自分に聴いてみることも大切であるし、案外、「理解不足」であることが多いので、深く観るためにも「2回以上観る」ということも必要ではないかと思う。それは、すぐでなくても良い。時間と共に得られる経験に応じて理解できる“想い”もあるのだから。
 
ごりぞう

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