ばふらー

すずめの戸締まりのばふらーのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
全ての不安が解消されることは無いとしても、今の為の物語だと思う。

・アニメーション
過ぎていく一瞬が勿体ないほどの映像美。画面内の情報量に圧倒され、感情が様々な方向に揺れる。丁寧で緻密な描写は、とことん綺麗な部分が抽出されている。人物の動作、乗り物の音、風の流れ、感心を通り越して若干引くくらいすごかった。

・内容
得体の知れない脅威に立ち向かう主人公。現実と地続きの世相に、神話に伝えられるようなファンタジー要素が加わった世界観。内容を振り返ってみて、明暗のバランスがとれていると思った。
1回目の視聴は流れに身を任せたほうが見やすいかもしれない。見ている間は心配と恐怖と安堵が繰り返されてオワァ~ってなる、忙しい。この演出にどんな意味が?と考えている間に次の展開が立て続けに起こり、テンポが早い。
主人公が一貫して最初から最後まで主人公してたのも驚いた。

・震災と喪失
操ることができない、一瞬でこれまでの世界を変えてしまう震災。人為的ではないから恨むあても無く、後悔は生き残った側に積もる。「あの時こうしていれば」という考えはいくらでも湧くのに、もう取り返しのつかない現実しかここにはない。生きている側のエゴだとしても、変わらず在って欲しかったという願いは消えない。
喪失の描写に対して、深く考えるほどネガティブな感情に陥りそうになる。受け取り手の背景によって感じる重さは異なるが、それら全てを照らすように、終盤のすずめの言葉がある。たくさんの人に照らされ、いつか自分も誰かを照らす日が来るという希望。押し付けられた無責任な願望では無いのだと、これまでを歩んできた彼女の言葉だからこそわかる。

全体的に眩しい。