ばふらー

MINAMATAーミナマターのばふらーのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.5
水俣病の話を通してユージン・スミスを描いた作品。
演出は二極化するとわかりやすく美しい構図になるが、事実を伝えるには向かない。

・内容について
水俣病そのものに関して詳しく知りたいと思った人には情報が足りない。題材への敬意は伝わるが、事実を描くものとしては意識的に排された要素は多い上に、誤解を招く表現もある。
綺麗にまとまりすぎているが、ユージンが遺した写真達からもわかるように、他者に伝えるための演出だと割り切れば納得はできる。
全てを伝えることはできない。コンテンツであることを割り切った上で、演出の為に情報をわかりやすく組み替える。軸となる出来事はそのままだが、周りを取り巻く事実が伏せられていたり、異なったりする。
何を読み取るかは見る側次第。
断絶された過去ではなく、現在にも続く事実だと自覚しなくてはならない。苦しみに寄り添うには知らなすぎる自分がいて、理解するには他人すぎる自分がいる。自分が勝手にひいてしまう境界線の向こう側に目を向けるきっかけにはなった。

・音楽について
音楽に少し違和感を感じた。感動的なBGMは確かに美しいのに、どこかで聴いたような気がする。作家の曲調を模倣したフリー音源に耳が慣れ、ありがちな演出に思えてしまうのは私個人の問題かもしれない。

・画作りについて
画作りは光と影を極端にしている。影を際立たせれば光は強調される。ピエタの構図を思わせるあの一瞬に集約されているように感じた。画が語る凄みというのは、受け取り手に様々なものを想起させる。作品を観ていると同時に、自分が何を知らないのかを自覚させられる。