ばふらー

ミッドサマーのばふらーのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.5
事前に、ショッキングな内容を含むことを知った上で鑑賞。


見終わった感想、お花きれい。びっくりするほど花。めちゃくちゃ花。ラストも花。
メイクイーンがお花の怪物みたいになって、ヨタヨタ歩くのかわいいなって思った。でも棺桶の中みたいにも見えた。


花以外の感想。
技術的なところだと、装飾やカメラワーク、VFXもうわ〜…ってなりました。細部まで美へのこだわりが伝わる。トリップしたら虫が這う幻覚のイメージがありましたが、草木が元気にダンスしてると綺麗だし愉快ですね。木のテクスチャがゾワゾワ動いてるとことか。

全体を通して、ごちゃごちゃしていない印象で不思議。印象的な構図と物の配置が、計算されたように整って見える。
ホルガの人々の動きもなんだか、わざとらしいほどの違和感を覚える。この人達は本当にずっとここで暮らしてるのか?という違和感。でも後半だいたいどうでもよくなる、というか気にしている暇がない。
映像の没入感がすごい。狂気が丁寧に整えられて、少しずつ明るみになっていく過程に血の気が引く。
サイコホラーは「意味深なんだけど映す必要性がわからない」なインサートで集中できないことがあるけど、ミッドサマーのように幻覚や悪夢の一種がじっくり映され、さらに異様にリアルだと意識が持っていかれそうになる。『誰かが自分を呼んでいる、背後にこちらを見ている人がいる。それは絶対にここにいるはずの無い、自分が知っている人間。』みたいな。風邪引いた時や徹夜続きの日のうたた寝によくある、一瞬なのにやたらと情報量のある夢。めちゃくちゃ疲れる夢。
それがすごく綺麗に映されたら、見入ってしまう。過去の不安や焦燥がじわじわと迫って来る感覚を思い出して、気付けば歯を食いしばって頭痛がするほどに。

これはこういうエンタメ!と思いながら世界観を楽しめる人じゃないとオススメできない。生贄達の家族は、彼らの死を知ることはあるのだろうか。命の輪が善意の受け渡しだと言うなら、その人の命を弄ぶ趣味の悪い集団だなぁ、と。そうやって冷静に観た気になることで、自身の抱いた恐怖や嫌悪がまともだと思い込むしかない。

ダニーが失恋の悲しみを乗り越えるぞ!!という話だとすればハッピーエンド。ずっと夢から醒めないままなら。