ばふらー

神々の山嶺のばふらーのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
4.0
質の高いアニメーションと、美しい背景。ミステリーとあるが、自然に対する神秘的な意味のほうが強い作品。

・アニメーションに関して
描かれる日本の街並みは人工物が多いのにシルエットがはっきりせず、湿度をまとった日本らしいぼんやりとした空気感がある。少し重苦しさのある街並みから、雪山の場面に切り替わるとハッキリとした山々の姿が描写されている。白く、眩い光景が自然の荘厳さを物語り、そこに挑む人々が途方もない目標に向かっているのだと理解できる。
自然風景は主線が無く、光の存在が特に際立っている。それから、雪の表情がとてもよかった。穏やかに舞う雪も、容赦のない吹雪も、生きた雪の動きをしていた。
人物の描き込みは必要最低限で抑えている。原作の迫力は作画の情報量があってこそだが、映画では動きと音で危機的状況を見せていた。静と動、描写する情報の取捨選択によって、全体的にバランスがとれていたように感じる。頭痛の演出はアニメーションの良さが出ていた。白から赤へ変わる時の、滲んでいく絶望感に息が詰まる思いだった。

・キャラクターに関して
個々が必要以上に語り過ぎず、行動によって答えを示している。その生き方から他者が何を受け取ったとしても、真実を知ることはできない。自然に挑むことは自分との闘いだと聞いたことがある。なぜそこに行くのか、到達した先に何があるのか、体験した者にしかわからないことがあるのだろう。
ロマンと言ってしまうと野暮だが、命をかけてまで突き動かされる何かがそこにあると語ってくれる。