エイデン

すずめの戸締まりのエイデンのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

亡き母に代わり育ての親となってくれた叔母 環と共に宮崎県の田舎町に住む女子高生の鈴芽は、不思議な夢を見て目を覚ます
それは幼い頃の自分が母を探して廃墟のような場所をさまよい、やがて母と思しき人物と会うというものだった
その後 鈴芽は登校中に、どこか見覚えのあるような綺麗な顔立ちの青年とすれ違う
その青年は鈴芽に対し近くに廃墟が無いかと尋ね、山の向こうにある廃墟となった温泉街を紹介する
青年は「扉を探しに行く」と言って去って行くが、どうしても気になった鈴芽は彼を探しに跡を追うことに
廃墟の中をあちこち探索するうち、鈴芽は扉だけが立っているのを発見する
あの青年の言っていたことを思い出した鈴芽が何となく扉を開いてみると、その向こうには美しい夜空とどこまでも続く草原が広がっていた
あり得ない光景に驚きながら、鈴芽は吸い寄せられるように扉をくぐるが、そこへは何故か辿り着けず、扉越しにしか見ることができない
困惑した鈴芽は続けて足下に像のようなものを発見し、地面からそれを引き抜く
しかしそれは少し目を離した瞬間に生き物となって走り去ってしまう
意味のわからないことの連続で恐怖を覚えた鈴芽は、開いた扉もそのままに逃げるように学校へ向かうのだった
しばらくて学校に着いた鈴芽が友人達と食事をしていると、ついさっきまでいた廃墟の辺りから煙が立ち上っているのを発見する
火事ではないかと指摘する鈴芽だったが、何故か友人達には煙が見えていない様子だった
その時 生徒達のスマホが一斉に緊急地震速報のアラート音を響かせる
続いて揺れが発生するも、鈴芽の視線は窓の外に釘付けになっていた
そこには、先程の煙が巨大な柱のような形となり、生き物のように空へと昇っていく異様な光景が広がっていたのだ
それもやはり友人達含め誰の目にも見えていないようで、不穏な気配を感じた鈴芽は、踵を返して廃墟へと向かう
すると煙のような何かは鈴芽が開きっぱなしにしていたあの扉から噴出していたとわかる
更にそこにはあの青年が扉を閉めようと奮闘しており、怪我を負ってしまった彼に思わず鈴芽は加勢することに
煙のような何かは地上へと倒れ込み、一帯は大きな地震に見舞われるが、2人の奮闘で扉は閉まり、青年が祝詞を上げながら鍵を閉めたことで事態は収束する
その後、青年は事態の深刻さを察し、解決に向かおうとするが、放っておけない鈴芽は、彼を家に招き傷の手当てをすることに
そこで鈴芽は、青年が“後ろ戸”から出現する存在“ミミズ”による地震災害を防ぐため、全国の後ろ戸を閉めて回っていることを知る
青年は草太と名乗り、代々後ろ戸を閉める役割を持つ“閉じ師”の家系なのだと言う
また鈴芽が引き抜いてしまったものは、神の依代である“要石”と呼ばれるもので、ミミズが出てこないよう後ろ戸を封印するためのものだった
責任を感じる鈴芽に草太は優しく接するが、そこへ見知らぬ猫が迷い込む
鈴芽は猫に餌をやり可愛がるが、その猫は突如として人の言葉を話し、草太の身体を鈴芽の亡くなった母の形見である子ども用の椅子に変えてしまう
その猫こそ逃げ出した要石そのもので、草太は3本足の椅子の身体を何とか動かしながら要石を追いかけて行く
鈴芽も巻き込まれるように要石と草太を追うが、やがて愛媛県行きのフェリーに乗り込み、そのまま逃げられてしまう
フェリーから降りる手段も無く、鈴芽と草太はそのまま一夜を明かし愛媛県へとやって来る
そこで要石の手掛かりを探した鈴芽は、SNSで要石が“ダイジン”と呼ばれ人気を博していることに気が付く
帰るように言われながらも、鈴芽は喋って勝手に動く椅子となった草太を1人にしておくわけにもいかず、協力してダイジンを捕まえることになるが・・・



新海誠監督のアニメーション映画

災い(地震)をもたらすミミズを止めるため、各地の後ろ戸を閉めて旅をする青春ロードムービー仕立ての作品
和風ファンタジーを基調にした要素も詰め込みながら、『君の名は』、『天気の子』と大きな災害を扱ってきた中で、東日本大震災という現実に深く根差した災害をテーマにしているのも特徴

東日本大地震から12年(作中設定が2023年)という月日を経て、まだ傷ついている人々も少なくない中、フィクション作品でそれを扱うという一種の覚悟も感じる作品と感じた
そして同時に鈴芽の成長を描く物語とも組み合わせており、やや煩雑さはあるものの上手い重ね方をしてる
扉は内と外を隔て、またそれらを繋ぐものとして、「いってきます」と言うために過去を認めていく、物語としてのまとめ方が綺麗
帰る場所があるから先へ進めるように、決して過去を捨てず、それを認めること、また認められる人の強さを謳う

そして物語としても、これまで以上のスペクタクルでちゃんとエンタメ性も高め
ここまでハチャメチャにしてるのはこれまでにも無かったと思うけど、相変わらず高クオリティな映像表現も相まって、純粋に面白くレベルの高いアニメーションとして観られる
まさか大怪獣バトルまで観られるとは思わなかった

様々な人々に出会い、世界の見聞を広めていく鈴芽の成長と共に、ストーリーの展開を過去へと進める構成もよくできてて、前述のテーマ性をよく伝えきれてると思う
前述の通り東日本大震災を扱っていることにはかなり気を使ったことは推測できるものの、
大事な人を亡くし、故郷を亡くした人々へフィクションが寄り添いながら送る人生の讃歌の物語と言った作品に仕上がってるので、賛否両論はあろうけど個人的には十分すぎる出来だった
観ましょう
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