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すずめの戸締まりのmityのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0
公開前からロングラン確定だろうと思っていたので、落ち着いた頃を見計らって観に行こうと決めていた。でも、落ち着くのはまだまだ先だったみたいだ。

多くの人の心に何かしらのキズを残した東日本大震災。鈴芽もまた、幼い頃に震災で母親を亡くしていて。高校生になった鈴芽にその悲しみを感じるのは難しいけれど、でもそれは他人の勝手な見方。鈴芽が繰り返し見る夢、3本脚の椅子、環に対する想い···震災はしっかりと鈴芽の心に陰を落としていて、被災の本当の終わりの難しさを改めて思った。

鈴芽の母親代わりの環もまた、震災で環境が変わったひとり。鈴芽を引き取ったことで、あったはずの自分の時間はなくなり、そのことで必要なかったはずの感情にも苛まれただろうと思う。終盤、環が鈴芽に伝えたドロッとした想いは、今の本音じゃなくても、過去に確実に過った筈の本音。心の奥底に溜めて吐き出すことすら出来なかった苦しみの重さに環の葛藤がみえて、環自身が良く頑張ったと言える日がくるといいなと思った。

長尺の予告編は何も見せていないに等しいと感じたほど濃い内容で、観終わった後、感想を言葉にするのは難しいなと思った。でも、鈴芽が自分で扉を開けて1歩を踏み出したように、この映画には、前向きな想いが込められていたと思う。観て良かった。


#14_2023
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