Maki

すずめの戸締まりのMakiのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.8
監督:新海誠
公開:2022年
視聴:U-NEXT


🛑ネタバレあります🛑


新海誠作品はあんまりレビューしていないけど『ほしのこえ』からリアルタイムでほとんど観ていた。

好きなのは『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『君の名は。』。この『すずめの戸締まり』はやや好き寄りかな。

公開から一年経つ今作をネタバレなしで観られたのは幸運。そのぶん関連記事やレビューに一切触れていないので勘違いもたくさんありそう。

●物語
・新海誠は「少年少女が崩壊寸前の世界を救うが、世間一般には気づかれない」セカイ系がほんと好きだよねー、またこれかいと想ったり、この拘りこそ作家性と納得したり

・東日本大震災で親を喪い、遠方の叔母宅で暮らす女子高生があることをきっかけに実家を目指し、道中で出逢う人々と深く触れ合う。このロードムービーの骨格が映画『風の電話』とそっくり。実家の跡地もそっくり。
いえ私ですら気づくほどなのでとっくに指摘されているはず。偶然なのか、阪神・淡路大震災後のロードムービーもあるので定番なのか

●いまいち
・ダイジン、サダイジン。特にダイジンの行動原理がまるでわからず。無邪気で意地悪だったのに終盤はずっと助けてくれるし、神様だから気まぐれ?うーん

・草太が「三本足の椅子」にされたまま旅をする様はどうも好きになれなかった、要石になる前兆だとわかっても

・映像も音楽もクオリティは高いし「叔母が鈴芽に恨みをぶつける」「幼い鈴芽を常世から現世に返したのは自分だった」も印象的だが「うおおお!」と興奮できる場面がない。鈴芽と草太が命懸けで巨大ミミズ退治しているだけだからそこに乗れるかどうかかもしれない

●よかった
・主演の原菜乃華と松村北斗のおふたりは巧い、観終えてから本職声優じゃないと知って感心した
・「戸」「戸締まり」「後ろ戸」「閉じ師」「鍵」「要石」「常世」「三本足の椅子」などのモチーフは好き。でも「閉じ師」って草太の一族しかいないの?
・鈴芽を助けてくれるのが、たくましく生きている女性ばかりなのは意識的な割り当てに感じる
・緊急地震速報の演出、きっと日本独自だよね
・東京を覆った巨大ミミズ本体の禍々しいデザイン

・3.11(東日本大震災)を主題として批判を浴びたとの噂も聞いた。「大地震はミミズによるもの」で「その被害を閉じ師が抑えてきた」と云われたら、フィクションとはいえ釈然としない方の気持ちもわかる。
それでも私には真摯に描いていると見えた。幼い鈴芽の「えにっき」はぐっときたし、無数の「いってらっしゃい」に現実の人々を想起する。届いてほしい願いの集約として心に残したい。
Maki

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