Maki

哀れなるものたちのMakiのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
原題:Poor Things
監督:ヨルゴス・ランティモス
公開:2024年
劇場(字幕)

🐔ネタバレあります🐶


モノクロ、カラフル、キマイラ奇譚。
シュール、シニカル、アダルト寓話。
ポップ、ゴシック、スチームパンク。
無垢と快楽、体験と吸収、咀嚼と成長、
自立と自律、破壊と再生、これぞ人生。

身投げした妊婦ヴィクトリア(演:エマ・ストーン)は、マッドサイエンティストのゴッドウィン(演:ウィレム・デフォー)にお腹の子の脳を移植され、無垢の子ベラとして再誕する。

死者であり生者、大人であり幼児、そして母であり娘でもあるベラの一挙手一投足、目つきの変化に魅入ってしまう。いやあ巧い。

ロンドン、リスボン、アレクサンドリア、パリ、豪華客船、現世と異世をかけあわせた情景設計はどのカットも不穏で秀逸。そこに緊張と緩和をまぶすイェルスキン・フェンドリックスの音楽も素晴らしい。

Poor Things=哀れなるものたちの悲喜こもごも。

遊び人だったダンカン(演:マーク・ラファロ)が逆に執着心に囚われて身を滅ぼすの実に皮肉だし。

良識人ぶったマックス(演:ラミー・ユセフ)だって「幼い」と知っている女性を娶ろうとしてるし。

海千山千の娼館主スワイニー(演:キャサリン・ハンター)も面倒見よさげながら搾取構造の主軸で。似たひと居るよね、川崎や横浜のあのへんとか。

元夫かつ男根代表アルフィー大佐(演:クリストファー・アボット)の末路には想わず「ゲっ」と声が出ちゃった。でも彼の脳はどこやったの、まさか山羊さんに?

ゴッドウィンはフランケンシュタイン博士さながらで、創造主から離れて旅をする人工生命体ベラはピノッキオも想起。

性欲と食欲旺盛な彼女が、海綿のような吸収力で世界の理を飲みこんでゆくのが楽しいし、飲み込めなければ巻き込んで破壊しちゃうのも可笑しい。

娘ベラは母ヴィクトリアの悔恨を晴らせたのか。それとも母の魂は娘とともにあるのか想い馳せながら、エマ・ストーンの快演に快哉!


●追記
絶賛じゃなく「それはどうかな?」と気になるところもあったもののここまで書いて力尽きました
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