三角

生きる LIVINGの三角のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
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おじさんの異世界転生じゃん!余命宣告で強くてニューゲームじゃないスかこんなもん!と思うのになんぼでも泣けるよ〜〜〜😭

ゾンビのように働いていた役所の課長が死期を知ったショックで蘇る!なんてまるで社畜の俺がトラックに轢かれ死んだら次の世界では前職が特殊能力!みたいな話だと思う…余命がないとあらば部下の女性も親切にしてくれようという感じ。
人との衝突を避け、責任を負わず、機械の部品のようだった公務員が余命バフで働いた!死んだ!以上!ってだけなのに…ってだけのことに…強靭な普遍性がある。そんなんできるなら最初からやっとけや〜〜〜🫵😡オイオイて感じだが。いつの世も官僚の人生はクソだけどたまに、その気になれば稀に、本当に人の役に立てる時がくる…!観終わって思うことはこれむしろ過去舞台じゃなくて現代の日本やイギリスやアメリカが舞台の方がよかったのでは?ということ…ほんと懐古趣味なんだから…イシグロって…しかし、未見の原作、黒澤版のこととか考えて、現代のこの社会はこのような人々がつくってきたもので、自分も一応はここまで生きてこれたのはきっとこのような瞬間があったから…ということに思い至ってかなり感動したのでこれはこれで良いとも思う。そういう過去を描いた作品をイギリスに作りたかったということなのかも知れない。しかしここまで人間の善性の発露が妨害される官僚制ってマジでクソだから即刻やめた方がいい。


以下ネタバレ(だけどネタバレがどうのこうの言う映画でもないと思う)
役所に出勤した同僚たちを置いて階段を昇っていったビルナイが朝の光に包まれた時感動した。岩井俊二映画の自然光のようで……

カズオイシグロのテーマっていつもやはり我々のものではない。Y2k以前の世代の問題であって、そういう著作を私が好きであるって究極、イシグロが書いている世界認識を上の世代に期待しているということだったのかも知れんと最近思っている。
将来なりたかった立派な人物になったはずが、なってみたらクソだった...この世界を良くしたかったのに...ていうのはイシグロ作品に頻出する主人公像である。これがオチにくることが多いのだが本作ではこれが真ん中にきて、このような世界だけど何かやれることがあるという希望を描く。どうしたの...そんな大人を甘やかす話をつくって...と思うけど最新作のクララとかはそういう話じゃなかったし2000年以前の著作の印象でいつまでも語られる方がイヤかも知れない...それにしても最後はずっとイシグロが掴んだ栄光ってあんなにどデカいしわかりやすく権威のはずなのにこんな作品つくるんだよな....(好きすぎる)と思ってそれも泣けた。

「よく隠し通してやり遂げたな…」ホントだよ、異世界転生かよ、でも最後の仕事と思うとなんでもできるよな!命かかってっからな!と思ってしまうが、しかし、できたのにやらなかったことを、遂にやった…だから死に際の体調でも完遂できたってことが実際だと思うから強くてニューゲームもとい、俺はまだ本気出してないだけ…だよな…最期を知り、人生が輝く。マジで普遍性があるテーマだと思うけどa.k.a俺TUEE公務員映画とかつくられるの70年に一度でいいな…やっぱ、できるんならそんなことになる前からやっといてくれよとは思うし。
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