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生きる LIVINGのTSのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.2
【リメイクする必要があったのか】72点
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監督:オリバー・ハーマヌス
製作国:イギリス
ジャンル:ドラマ
収録時間:102分
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 2023年劇場鑑賞16本目。
 言わずもがな、かの黒澤明の名作『生きる』のリメイク。半世紀以上前の名作をリメイクすることは意欲的であり挑戦的ではあるのですが、途轍もなくハードルが高い。確かにそのプロット通りに描き通せば及第点となるのですが、一方でどうしても黒澤明のそれと比較をしてしまいます。なので、完全に単体としてみたらもう少し点数は高いと思うのですが、あくまで今回は比較したら、という観点でつけさせてもらいました。もちろん悪くないけれども、まあ期待していたよりかは、、と言ったところです。

 公務員のウィリアムズは、毎日事務処理に追われて平凡で孤独な毎日を過ごしていた。社員からは「ゾンビ」というあだ名をつけられていた彼は、ある日癌があることを知ってしまうのだが。。

 どうしても黒澤明の『生きる』が白黒であったのでそのインパクトには勝てない。ビル・ナイも良い演技をしているのですが、やはり志村喬には一歩及ばない。それに、今回のこのウィリアムズは結構なお歳であると見受けれるため、癌と言われても客観的にみたらまあ仕方ないか、と思えてしまいます。あの志村喬が演じた渡辺は50かそこそこの歳でして、退職したらゆっくり余生を楽しもうという感じの年齢と見受けられます。だからこそより一層鑑賞者は同情できるのだと思います。

 自分が何か残せるものはないか。生きている証拠を見出したい。その中で公園をつくるという目標に進んでいくのは、二作とも同じ展開です。ただ、ウィリアムズが亡くなってからの展開が今作はやや微妙。というか黒澤明の『生きる』は、渡辺が亡くなってからのシークエンスが真骨頂なのです。人は失ってから大切さを知る。とよく言うように、まさに黒澤明の『生きる』はそれでした。なかなかの尺を使い、故人の前で思い出話を繰り広げていく。そこからの公園でのブランコのシーンが映画史に残るものとなりますので、やはりこのあたりでかなりの差がつけられたのではと思います。無論、今作でもそのようなシークエンスはあるのですが、割とあっさりと終わります。

 残念ながら感動して涙が出る。というところまでには行かず、完全に名作『生きる』の二番煎じとなってしまいました。端的に、リメイクする必要があったのだろうかと思えてしまいました。いや、半世紀前のかの名作の名を再び轟かせたいのなら、このリメイクは成功したと言えるのではないでしょうか?
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