12世紀の歌人、西行の名を日本人なら一度は聞いたことがあるはずだ。その西行の伝説の一つにこんなものがある.
西行は、人里離れた高野山での修行中、人恋しくなって、反魂の術という、屍人を甦らせる術を戯れにとり行ってしまう。
「鬼の、人の骨を取集めて人に作りなす例、信ずべき人のおろ語り侍りしかば、そのままにして、ひろき野に出て骨をあみ連らねてつくりて侍りし」
出来上がったのは、とてもお互いの意思疎通が出来るような代物ではなく、外見は人だが、人に似て人に非ずな"なにか"であった。嘆きつつも、西行はそれを人の通わぬような山中の奥深くに捨ててきてしまう。
屍人返りや、「フランケンスタイン」よりも遥か前にあった話しは、洋の東西を問わず、古今から語られ続ける物語。
現代ではクローン技術が発達し、新たな反魂の術として、また新たな物語が出来るかもしれない。本作はそんなことを想起させてくれる。
灰が散り積もったような情景の中、背徳の儀式は写された。墨西哥の美術館再建で発掘された体の映像は人類の堪えきれない夢を顕現させる。
グロテスクでビザーレ。人はいつも異形の未知なるものに惹かれるものだ。