スカポンタンバイク

ティルのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

ティル(2022年製作の映画)
4.0
2024年の映画館1本目。
(ちなみに初映画は「聖なる鹿殺し」。面白かったねぇ。)

1955年の黒人少年のリンチ虐殺事件とその裁判を映画化した作品。
事件自体の悲惨さは凄まじいものなのは前提として、映画としては普通の出来。
この映画特有の要素としては、ダニエル・デッドワイラー扮する少年の母親が、事件を黒人全体の問題としてキャンペーン化していく中で理想的な運動家として演ずる一方で、母親の個人的な息子へのやりきれない思いが溢れるという、二面性が同時進行で描かれる所。これは正に、ダニエル・デッドワイラーの名演技の賜物で、裁判の尋問シーンでのワンカットで、この二面性が切り替わる瞬間が見られる。これが本当に素晴らしい名演で、一見の価値あり。
ラストの現在に至る文章で心底ズドンと来る一本だし、考え込まされる。とにかく映画自体は、色んなバランスを考えて作ってるなぁと思わされるくらい真面目な映画なので、事件を知るという意味では大変おすすめな一本です。