回想シーンでご飯3杯いける

TAR/ターの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.7
ベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ターの才能と、それに伴うプレッシャーを描いた作品。主演はケイト・ブランシェットで、本作で複数の主演女優賞を獲得している。

本作では、厳密に言うと、ターの音楽的才能と、首席指揮者として人事権の双方を描いていると思う。鑑賞している時は、後者の人事権を軸にした風刺ドラマとしての側面に注目した。オーケストラの人事を決定できることから生まれるハラスメント。その独裁的なやり口は、音楽や映画の世界で実際に問題視される事も多く、ちょうど本作が公開されていた時期にも、日本のアイドル事務所の元代表によるセクハラが海外のメディアで告発され、今も大きな論争を生んでいる。

一方で、音楽家としての才能の部分は、演奏シーンが何故か極端に少ない事もあって、ケイト・ブランシェットの女優としてのカリスマ性に頼っている感が否めない。例えば「セッション」では演奏シーンに説得力があった事で、パワハラ講師の手腕に飲み込まれるようなスリル感を味わえたのだが、本作はそこがどうにも物足りなく思えるのだ。

とは言っても、観る人にとって捉え方が180度変わる作風はとても挑戦的。音楽面での不足を補えるかどうか怪しいけど、本作の公開直後にケイト・ブランシェットがグラストンベリー・フェスにゲスト出演した時の動画も面白いので要チェック!

Sparks - The Girl Is Crying In Her Latte (feat. Cate Blanchett) (Glastonbury 2023)
https://youtu.be/YL97CRvXr9Q?si=BNVbDJ7g2TS4gzgu