とむ

TAR/ターのとむのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.2
奇妙な恐ろしさ、悍ましさを感じる映画だった。
描くべきところを悉く描かず、その輪郭だけをなぞっている様な…

映画を見ている間の緊張感みたいなものは常にあって、不穏だったりスリリングだったり…
ノイジーな対象として途中追放される副指揮者の男性がカチカチとボールペンをノックしていたり、最後主人公を利用するだけしてつっけんどんになるチェリストは食事の仕方が汚かったりと、「音楽」というより「音」による演出の機微が光るシーンが多かった印象。

ラストの飛躍とか、他の映画だったらそこをこそ深掘りするんだろうけど、観てるこっちが困惑するくらいぶっ飛ばしてて初見エンドロールで「???」状態。

あとで考察的なものを調べて「そういうことか…」とはなったものの、売春や身売りとして見た目を「評価」されることと、あくまで芸術的な評価軸において技術や才能を「選ばれる」ことは全く別物だと思う。
某男性アイドル事務所の社長みたいに「自分の立場を利用して〜」的な選び方をしているならまだしも、チェロの彼女だって技術面で評価されて満場一致で決まってたりするし、個人的にターはそこまで既得権益を振り翳してる様には感じなかったけどなぁ。
「あいつの思想が気に食わない!だから作ってるモノもクソだ!」みたいな思考の学生に説教するのもそんなに間違ってると思わないし、なんだかなぁ。
(そう思っている時点で、自分もそういう業界の考え方に毒されてしまっているのかも知れないけど…)

個人的に北欧映画的な静けさや暗喩の散らばめ方を感じる作品だったな。
でもせっかく頭でエンドロール流してるんだからラストのクレジットは省略してくれてもよかったのよ。
とむ

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