とむ

イノセンツのとむのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
3.2
「北欧で大友克洋の『童夢』が実写化されたぞ!」と会社の同期に教えてもらい、早稲田松竹の再上映で観てきた。
(監督も公言してるみたいなので言っちゃっても良いよね)

実際見てみるとなるほど、終盤のベランダから見下ろす複数の子供達や、精神疾患(本作だと自閉症)を抱えた体格的に主人公よりも色んな意味で大きな存在、最終的に敵対する「アイツ」の末路など、
映画的なアレンジや完全に子供のみでストーリーを構成したりなどの変更は見受けられるものの、童夢そのものな展開が確かに見受けられた。

じっとりとした温度低めな質感の映像に、
怒りや不穏感による沸々とした熱でじわじわと苦しめられるような恐ろしさに終始苦しめられつつ、アートフィルム的な絵作りの丁寧さもあり終始惹きつけられてしまった。

主人公として描かれる少女は"善"と"悪"、
どちらにも転びうる危うさを抱えていて、
喋らないしええやろ、の精神で自閉症の姉を母親に見てもらえない腹いせにつねったり、
ミミズは殺せるけど猫は殺せないっていう実在感のある"無邪気"として描かれているのがバランスいいなぁと思いました。
ストーリーラインは童夢と言いつつ「クロニクル」にも近い印象を受けました。

あと、主人公たちの服にカラフルなボーダー柄が用いられていたり、お姉さんの名前が「アナ」なのはやっぱりMOTHER2から来ているのかな。
監督「童夢」から影響受けてると公言してるし、日本のカルチャー的にも知ってそうだな〜と思った。


ただ、最後まで見て思ったのは「やっぱり大友克洋はすごい」ということ。
原作に存在するあのジジイや、ちょっとしたオブジェクト(羽付きの帽子とか)。
もちろんサイキックバトル的な絵的な迫力もあったけど、そういう微細なものによる引力があの作品の魅力だったんだなぁと再確認する結果になった。
漫画で読んだ方が面白いのは間違いないと思う。


残念なのは、この内容だったら日本でも作れたよな〜ということ
一応「来る、」が近しい描写はあったけど、、
北欧に先越されちまったなぁ
とむ

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