劇場で見た予告に惹かれ、夢枕獏の小説が原作という情報を小耳に入れて鑑賞。
見始めてすぐ、フランスで製作された作品なのに、なぜ90年代の日本をこんなに緻密に描けるのだろう…と思ったら谷口ジローの漫画がベースにあることを知った。
(2016年に実写化されているらしく岡田准一なら見てみようかと思ったが評価が低すぎて怖くて見れない)
山に取り憑かれた男たちの執念の旅
事の発端は「そこに山があるから」の雑学でおなじみのマロリー。山岳記者の深町はカトマンズで、エヴェレストで遭難したマロリーの遺品とされるカメラを目にする。深町がカメラの行方を追っていると、行方不明となっていた孤高のクライマー・羽生がそれを持ち去るところを目撃した。深町はエヴェレスト登山史上最大の謎に迫るため羽生について調べ始める。
基本的にはミステリー調だが、本格的な山岳モノ、スリリングなサバイバルであり、人間の本質を捉えた骨太なドラマだった。
人生の全てを山に捧げ、過酷な自然に身一つで立ち向かう。自分の体の一部を失おうとも、仲間が死のうとも、また次の挑戦を繰り返す。
無謀とも思われる登攀は一瞬の出来事で絶望の淵に立たされる。目の前に立ちはだかる氷の壁、迫り来る死の恐怖、死んでいった同志の亡霊…
アニメーションだからこそできる表現でその感覚を観客に体験させていた。
人はなぜ山に登るのか?という疑問はこの作品を見るとさらに分からなくなった。
「頂(いただき)は通過点でしかない」
という羽生の言葉だけが妙に心に残っている。
海外で製作された素晴らしいアニメ作品を堀内賢雄&大塚明夫さんの吹き替えで観れるなんて贅沢な映像体験だ。