グラビティボルト

ブラックライトのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

ブラックライト(2021年製作の映画)
3.4
リーアム・ニーソン活劇の魅力である、「心に問題のあるプロ」はしっかり押えられていて、前作
「ファイナルプラン」のユルさも健在。
ただ、その割には登場人物は多すぎて混乱気味なのは残念。
孫が行方不明になって錯乱するパラノイアのドラマに振り切って欲しかった。

孫娘と商業施設で遊ぶ時、出入り口の数を確認せずにはいられない、
ドアのロックをやたら確認する、
冷蔵庫のビールを正確な間隔で揃えている、口を付けるものの香りは必ず3回確認する等「96時間」でニーソンが確立したパラノイアのヒーロー設定をこれでもかと足し算している。

リベラルな女性議員候補者を凄まじい勢いで轢殺する車両、ニーソンの運転する車の異様なスピード、
ニーソンから逃げるテイラー・ジョン・スミスが乗るタンクローリーのギミック等、前半は特にアイデアが豊富で飽きる事が無かった。
ただ、事件を追う女性記者との群像は難しい。

エミー・レイヴァー・ランプマン演じる記者の取材、調査が他から指摘のある通り本当に「なんとなく」になってしまっているのが辛いのかな。
印象論で嗅ぎ回っていたらたまたまニーソンと鉢合わせしたような人物で、だいぶ説得力に欠ける。
簡潔な切り返しがあれば良かったんだが

前作「ファイナルプラン」の時には無かったと思うのだが、中途半端に
トニー・スコット辺りのMTV派にかぶれたような技巧も、オーセンティックなニーソンの雰囲気とは合わないかなと。
上述した鉢合わせした二者の切り返しも、妙なデコレーションが過剰で困惑した。

ニーソンがFBIに反旗を翻してから
孫娘と娘が行方不明になってしまう件は「バニー・レークは行方不明」的な精神不安を伴うスリラーのような細部が表出するんだけど、そこも結局強調されないのがこの映画の難しい所だと思う。
「3回確認する」強迫神経症も、戦闘で活かして欲しいのだが難しいかな。