耳が聞こえない元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に描いた三宅唱監督作。
“原作”ではなく”原案”となっていて、時代や家族構成などを変更しているため実話ではないそうだが、ドキュメンタリーと思われても不思議ではないほどリアリティがあった。
それほどに岸井ゆきのの役作りから演技まで素晴らしかったし、やり直しがきかない16mmフィルムの良さに溢れていた。
また、耳が聞こえない生活を疑似体験させるべく無音にするのではなく、むしろ環境音を際立たせることで、ケイコにはこの音が聞こえいないのかと想像させる音の演出も良かった。
耳が聞こえない人への配慮のあり方を考えることができたと同時に、「周りの支えがあるからこそ自分自身にベクトルを向けることができる」ということも再認識させられた傑作だった。