ヒナウラ

ケイコ 目を澄ませてのヒナウラのネタバレレビュー・内容・結末

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ケイコが目を澄ませるとはどういう体験なのか。
ケイコがジムのロッカーに入室した際、壁をノックすることで、自身の存在を知らせたように、この映画は、ケイコの周りにある、あらゆる音に注意を促すことで、ケイコの目を澄ませる様を見せてくれているように感じた。

映画の冒頭、鏡に映るケイコを捉えていたが、部屋でも職場でも、鏡がよく出てくる。
なかでもクライマックスは、ジムの大きな鏡に向かって、会長とふたりでするシャドーボクシングなのだろうけれど、あそこはどうして心を打たれるのか。会長に合わせるように動作するケイコ、相似の姿、目の前にある鏡の存在。

ところで会長入院直後のジムの場面のラストショット、これまでと同じ位置から椅子と机をとらえることで、たんに会長のいた空間が空いただけではない、心に穴が空いたような喪失感を表現されたり、

夜、画面奥の高架下から、手前に向かって走ってくるケイコ、そのときに通過した電車の光が高架下をキラキラさせる様子や、埃の見せ方、まるで影絵のような描写まで、ケイコに寄り添いつつも、監督の色が随所に散りばめられている気がした。
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