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X エックスのRのネタバレレビュー・内容・結末

X エックス(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

自宅で友人1人と。

2022年のアメリカの作品。

監督は「サクラメント 死の楽園」のタイ・ウェスト。

あらすじ

1979年、テキサス。女優を夢見るマキシーン(ミア・ゴス「家をめぐる3つの物語」)をはじめとする6人の男女が自主制作のポルノ映画を撮影するため、とある農場を訪れる。そこで連日撮影を開始するマキシーンたちだったが、彼女らをじぃーと見つめる不気味な老婆を見かける。やがて、彼らのうちの1人が姿を消したことで悪夢のような一夜が訪れる。

ずっと観たくて、なかなかタイミングが合わず、ようやくいつもの友人とU-NEXTで鑑賞。

お話はあらすじの通り、なんとなく題材的にシャマランの再注目作である「ヴィジット」を彷彿とさせるような内容となっている。

あちらも「おじいちゃん、おばあちゃんの様子がおかしい!!」的なホラーだったけど、今作では、特に今作のおばあちゃん、その名もパールが明確な殺意を持って襲いかかってくるから恐ろしい。

まずは、襲われる側の話から。主演は、もはや今作と続編であり、おばあちゃんの若かりし頃を描いた2作目「パール」で最注目の女優として一挙躍り出たミア・ゴス。「ゴス」という芸名の通り、どこか暗さを携えた雰囲気のある女優さんなんだけど、まぁーとにかくこのミア・ゴスの演技に舌を巻く。

というのもこのマキシーン以外にもう1人の人物を演じたからというのもあるんだけど、それについては後述。

とにかく脱ぎっぷりも良いし、それでいて、ファイナルガールとしてのキャラクターにしては明らかに「何か」を抱えていそうなバックボーンもあって、とにかく彼女には常に目を惹かれるような作りとなっている。まさに彼女のための作品と言える。

また、彼女と同じく自主制作のポルノムービーで脱ぎまくるブロンドのボビー・リンを演じた女優さん、なんかどっかで見たことある顔だなぁと思ったら「ピッチ・パーフェクト」シリーズの副部長的なキャラを演じていたブリタニー・スノウ(「サムワン・グレート〜輝く人に〜」)じゃねぇか!!あっちでは言うても歌って踊れるコメディエンヌ的に立ち回っていたのに対して、今作ではポルノ女優ばりに濃厚な濡れ場を体当たりで演じて、見事なパイ乙も惜しげもなく披露していてめっちゃびっくりしたなぁ、もう。

また、注目すべきは映画スタッフとして同行する、メンバーの中では1番若いロレインを演じたのが、今やNetflixの独占配信のドラマシリーズであり、映画「アダムス・ファミリー」のスピンオフでもある「ウェンズデー」で令和版ウェンズデーを演じて、一気に時の人となったジェナ・オルテガ(「スクリーム6」)も出ている点!!え?あのウェンズデーがこんなスラッシャームービーに出てるの!?もしかして脱いじゃうの!?とヒヤヒヤして見てたら、なんだ、撮影スタッフか…と安心してたら、なんとマキシーンとボビーの体当たりの演技に触発されたのか、「あたしも出たい!」と中盤言い出して、下着姿で濡れ場シーンに出ちゃう威勢の良さ!!まぁ、流石に年齢的に実際に濡れ場を演じる場面はなかったけど、なんかあのウェンズデーがこんなイケナイことを!!という意味では、なんかオタサーの姫がリア充にNTRされてるのを見ているようで、劇中の彼氏が思わず、撮影が終わった後に1人風呂場でショックで泣いちゃう気持ち…わかるぞ!というすげぇキモい共感があった笑。

そんな感じで、特に女性キャラがみんなキャラが立ってるんだけど、男側も、あの、ティーンに大人気のラッパー、キッド・カディ(「キット・カディ:Entergaractic」)演じるヤリチンのポルノ男優、ジャクソンの影になってもわかるくらい、人の腕くらいありそうなご立派な男根に息を飲んだ…。やっぱ向こうの人ってすげぇんだな笑笑!!

そんな感じでうら若き男女の戯れムービーを撮影中のところを覗き見して、ムラムラしちゃったのが上記のおばあちゃん、パール。

しかも、このパール、実際に演じているのがなんと主人公であるマキシーンを演じたミア・ゴスが特殊メイクを施して1人二役で演じているというからびっくり!!

つまり、本作、「若さ」という無限の可能性を持った女優志望のマキシーンと「老い」によってもう既に誰からも見向きもされず、唯一愛した旦那であるハワード(スティーヴン・ユーレ「デビルズ・メタル」)はインポでヤりたくてもヤれないという「生きる」希望すら失った老婆のパールという「表裏一体」の2人のキャラクターを1人の女優が演じたことで明確に「老いへの恐怖」を効果的に描くことにものすごく成功している。

実際のパールはマジで言われないとミア・ゴスが演じてるとは信じられないくらい、マジでヨボヨボのおばあちゃんで、やせ細って骨張った手や指もそうだし、特に中盤、若さへの渇望なのか、夜な夜な若かりし頃の自分を投影したマキシーンの寝室に夜な夜な忍び込んで、薄いネグリジェを脱いで、骨と皮だけになった裸体でマキシーンの寝床に忍び込んで、そのピチピチの肌に思わず触れるシーンは悍ましさと共に切なさもあって、本作白眉の名シーン。

で、撮影の濡れ場を覗き見たことで「私も誰か抱いてぇ!!」と監督であり、ロレインの彼氏であるRJ(オーウェン・キャンベル「ミスエデュケーション」)に彼女なりの誘惑でアプローチするんだけど、もちろんNG食らって、ナイフで首元グサー!からの車のフロントライトが返り血で真っ赤に染まる中で更にオーバーキルしながらグサグサ刺した後、殺意の波動に完全に目覚めちゃって恍惚の表情でフワーと夢遊病的に踊るシーンもすごかった!!その後のプロデューサーのウェイン(マーティン・ヘンダーソン「ストレンジャーズ 地獄からの訪問者」)を納屋で鍬で眼球を一差しするところもすごかった!!

また、旦那のハワードも旦那で、パールを止める役目かと思いきや、ロレインを地下に閉じ込めた後、ヤリチンのジャクソンを騙してショットガンでワンショットキルしたりとパールに負けず劣らず殺人鬼としてのポテンシャルを発揮するから恐ろしい!!

で、このパールとハワード、それまではハワードが勃たないことで完全に性機能不全状態だったんだけど、殺人衝動を通して、一挙に生気を取り戻したのか「やれるの?やっちゃう?」と連続殺人の最中、思わずベッドインしちゃう終盤のシーンがこれまた別の意味で悍ましい!!ただ、それまであれだけゆめも希望も生きる気力もないように見えた2人が遂に再び結ばれたという意味ではハッピーなシーン…と言えるのか、これは。

前半はややギアが入るまで冗長的で少し退屈な場面もぶっちゃけあったけど、全体的な作りは70年代ホラー、特に「悪魔のいけにえ」を彷彿とさせるムードだし、他にもロレインが地下の扉を斧でこじ開ける云々のシーンは「シャイニング」、そして農場にある汚らしい沼、そしてそこに巣食うワニという点ではトビー・フーパーの「悪魔の沼」と言った数々のホラームービーオマージュを見つけるのも楽しいし、その上でどう転ぶのか誰も予想がつかない終盤の数々の展開もめちゃくちゃ面白かった!特にパールの最期!!まさか、まさかと思ったら勢い良く逝ったぁーー!!グロい!!

つか、この殺る側だった老夫婦の顛末も穿った見方をすると「SEXしたら殺される」というホラー的な定石の意趣返しだったりするのだろうか?

という感じで、実は今作、この後に控える上記の続編「パール」と更に続く最終作「マキシーン」と3部作構成で、え?こっからどう描くの?という感じなんだけど、序盤から意味深にテレビで放映されてたキリスト教の演説番組の宗教家が実は…な真実が発覚されたことで、やはりマキシーンその人にも何かあることがわかって、その上で評判も既に上々なパールの過去に遡り、そしてマキシーンに再び辿り着く、この構成、そして今作のラストは「引き」としてはものすごく良くできてる!!

そして、ラストはラストで散々テーマ的に実は高尚ぶってるけど、結局は「クソホラー映画じゃねぇか!」と一笑に付すかのような切れ味鋭い終わり方もまた…小憎いねぇ😏

あと、何より俺自身、「パール」がものすごく楽しみとなった!

いやぁ、さすが気鋭のスタジオ、A24。只ならぬ意欲作という感じでものすごく変な作品であるけど、トータルなかなか楽しめた作品でした!!
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