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キンキーブーツのRのネタバレレビュー・内容・結末

キンキーブーツ(2005年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2006年のイギリスの作品。

監督は「ロイヤル・ナイト 英国女王の秘密の外出」のジュリアン・ジャロルド。

あらすじ

倒産しそうな靴工場の跡継ぎとなったチャーリー・プライス(ジョエル・エドガートン「ボーイズ・イン・ザ・ボート 若者たちが託した夢」)は経営困難に苦しむ中、ある日チンピラに絡まれているところのドラァグクイーンのローラ(キウェテル・イジョフォー「ポッド・ジェネレーション」)と出会ったことで彼女たちが履く「キンキー・ブーツ」の生産を思いつくのだが…。

U-NEXTにて、配信終了が迫っている中からチョイス。

名前だけは聞いたことがあるこの作品、ただ今作、映画化された本作よりもブロードウェイ・ミュージカルとして劇画化されたもののイメージが圧倒的に強い。

ブロードウェイミュージカルではほぼほぼ名作扱いされて、何度も上演されているし、ここ日本でも故三浦春馬がドラァグクイーンになって演じたことが話題になったミュージカルがあったように、やはり本作映画というよりもミュージカルのイメージが強いものとなっている。

そんな本作、もちろんミュージカルは一回も行ったことのない俺からしたら名前は知ってても内容は知らなかったんだけど、そこでこの映画化作品、ということで期待して観たんだけど、なるほど普通に胸熱な作品でした。

お話はあらすじの通り、宇多丸氏の言葉を借りるならば「負け犬たちのOnce Againもの」といったらいいのかな?

主人公は倒産寸前の靴工場の跡取りとなったチャーリーで、演じているのはクセメン俳優、ジョエル・エドガートンなんだけど、マジで若い!エドガートンって割とその無愛想な表情からコワモテのイメージがあったんだけど、今作のお坊ちゃんながら工場経営を立て直そうと懸命に奮闘する様が新鮮だった。

で、そんなチャーリーと運命的な出会いを果たすドラァグクイーン、ローラを演じるのが、なんとあのキウェテル・イジョフォーというから驚き!

キウェテル・イジョフォーといえば「それでも夜は空ける」の鮮烈なアカデミー受賞もあったりと演技派の俳優ではあるけれど、どちらかというとこちらもコワモテでシリアスなイメージが強く。ルックスも女性的なイメージは皆無。だから今作のローラ役は見た目だけみるとめっちゃがっしりコワモテなイジョフォーが女装してるというだけでかなりコミカルなんだけど、そこは流石アカデミー俳優、見事に女性的な所作をこなして、どことなく気品というかドラァグクイーンとしての「気高さ」みたいなものが感じられるから不思議だ。そして、なんといっても、やはりこの手のキャラクターに多い人間としての「暖かみ」も抜群にあって、チャーリーとの心の交流もそうだけど、なんといっても印象深いのは中盤の腕相撲シーン。

工場で働く人たちの中に、あのサイモン・ペッグと名コンビの俳優、ニック・フロスト(「ビリー・ウォルシュとデートする方法」)演じるドンって男がいるんだけど、丸坊主に剃った髪型とガッチリした体型で見るからにマンパワーに溢れている見た目からもわかる通り、「男が女の格好をしてやがる!」とニヤニヤ顔でローラを馬鹿にしている嫌な男。で、そんなドンと行きつけのバーでどうやら3年連続でタイトルを勝ち取ってる腕相撲で対決することになるんだけど、このローラがなんとそんなドンに肉薄する!で、後もう少しで勝てる!ってところで急に耐えきれなくなって結局負けてしまうんだけど、実はドンのプライドを守るためにわざと負けたことがドンの試合後のセリフにより発覚するんだよなぁ。いやぁ、優しい!腕相撲時のお互いが自らの「守るべきもの」のために必死になってる姿からのそれでも「勝ち」はドンに譲るその心意気、惚れるわー。

そんな感じでローラの影響によって、工場の人たちが、そしてチャーリー自身もどんどん変わり、ドラァグクイーンの人たちが履くド派手なブーツ「キンキー・ブーツ」をパリで行われる、靴のファッションショーみたいなところに出店して、大々的に宣伝するために奮闘するんだけど、なんといっても名シーンはクライマックス。

あることがきっかけでショー直前でチャーリーとローラが仲違いしちゃって、ショー当日も本番にモデルとして出るはずのローラがこない!という事態になっちゃうんだけど、もう破れ被れとばかりにチャーリーが上スーツ、下ボンテージでブーツを履いてショーに出ることしかなくなっちゃって、履き慣れないブーツでまともにランウェイ歩けなくて、もはやこれまでか…となった時に颯爽とローラが仲間のドラァグクイーンたちと登場し、見事なまでの歌唱で歌い上げる!!いやー、めっちゃかっこいい!!演じるイジョフォーもめっちゃダイナミックな歌唱力だったり、仲間たちのローラを盛り立てる華やかさもあったりとシーンとしてめちゃくちゃ痺れたなぁ…。


ただ、ちょっとした不満点もあって、今作チャーリーは元々、ニコラ(ジェマイマ・ルーパー「悪夢のスイートホーム」)っていう結婚相手がいるんだけど、工場で働く中にもチャーリーといい感じになるローレン(サラ=ジェーン・ポッツ「狂気」)っいうヒロインポジの子がいて、いい感じになっていくのでどうなるんかなーと思ったら、ニコラの方が不動産業者と浮気して出て行っちゃって、それまではチャーリーを支えて、工場を継ぐことになって、普通に業務に追われて全然構ってくれないチャーリーに対しても我慢したりとそこまで嫌な人じゃないのに、ローレンとの関係性を描くための当て馬的にされちゃってて、ちょっと可愛そうだったかなぁという感じ。

まぁ、でもラストは良かったし、全体的にも男も女も関係ない、その人の生き様にこそ美が現れるという、今の多様性社会にこそ改めて評価されるようなハートフルな作品だった。まぁ、でもやっぱ本場はブロードウェイなのかな。いつか、見てみたい。
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