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コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのmaroのレビュー・感想・評価

3.5
2024年日本公開映画で面白かった順位:25/31
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

人工妊娠中絶にまつわる実話ベースの映画。
女性を救う活動という点においては賞賛したい気持ちもあるけれど、とはいえ素人が医療行為を行っていることに複雑な気持ちを抱く。

この映画、まず主人公のジョイ(エリザベス・バンクス)の行き詰まりが心底やるせない。
彼女は2人目の子供を妊娠中に心臓の病気が悪化してしまうんだけど、それを治療するには妊娠をあきらめる、つまり中絶するしか道がないというのだ。
なのに、当時のアメリカでは中絶は違法とされているため、誰も引き受けようとしない。
中絶しないと母体は助からないのに誰もやってくれないって、、、それって死ねって言ってるようなものでは。。。

そんなときに知った中絶サービスを提供する「ジェーン」という団体。
ここでは、お金さえ払えば誰でも密かに中絶してくれるのだ。
映画では600ドルだったかな。
当時の日本円でいうと20万円ちょいって感じだけど、高いのか安いのかわからんけど(笑)

そこにはいろんな人が電話をかけてくる。
避妊せずに望まない妊娠をしてしまった人やレイプされた人など、年齢や人種は問わない。
ただ、お金を払えることが条件なので、それができない人はお断りをしていたけど。
そんな状況を目の当たりにして、メンバーの中にはもっと門戸を広げるべきだと主張し、正規料金で施術を受ける人を増やす代わりに、週2名まで無料枠を作ったりもするなど、恵まれない女性への支援にも力を入れていた。

そんな中、途中で問題が発覚する。
施術を担当していた男性医師は、医師どころか医学部にも行っていないド素人だったのだ。
もともとニセ医者の手伝いをしていたジョイは、「そんな人でもできるなら自分にもできるのでは」考え、なんと彼女が施術を引き継ぐことに。
以前、ニセ医者から「カボチャのタネをほじくりだす要領で」と言われていたこともあり、ジョイが家でカボチャを使って練習するシーンは滑稽だったな。
一時期、彼女の家には大量のパンプキンパイが作られてたから(笑)

結果的に、「ジェーン」では数年の間に12,000人の女性を施術したそう。
しかも、死亡者はゼロ。
女性の自由のために戦ったと言えば聞こえはいいけれど、個人的にはちょっと受け入れがたかったかな。
だって、リスクが大きすぎるでしょ。
死人が出なかったのは本当にただ運がよかっただけ。
いつ人が死んでもおかしくないし、体内に傷がついて別の病気を発症する可能性だってあったわけだ。
普通の人はやろうとしなかったことをやり抜いたことで多くの人が助かったという事実もあるけれど、これはやっちゃいけないかなと思った。
でも、こういうのって資格があっても下手な人はいるし、資格がなくても上手い人もいるから、資格ってスキルの保証にはならないよなあとも感じる。

そんなわけで、設定自体は面白かったし、こういう歴史があったことを知れる点においては有意義な映画だと思う。
ただ、中絶というセンシティブな内容なのに妙にポップな雰囲気だったのと、患者と向き合う話よりかは、途中から中絶がルーティンみたいになって淡々としていたのは、個人的にちょっと違和感あったかな。
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