実話ベースなのでしょうがないのだが、いかにもよくあるタイプの女性のサクセスストーリーで、「こんな陶芸家がいたんだ」という知識にはなるのだが、映画としては物足りない作品。
それに経営者とのロマンスがイマイチスッキリしないのも、実話ベースのせいだろう。
実際は奥さんが亡くなった後結婚しているそうだ。
でも、この時点では妹の彼氏が言ったように、「女」を武器に取り入ったと思われてもしょうがない。それに、実際そのような意味合いも多分にあったのではないだろうか。
今作ではそこらへんはあまり触れないように、ソフトにまとめているが、これが逆にご都合主義に見えてしまい、いかにも女性監督の逃げ方だな、と思えてしまうのがマイナス。
それに、あたかもクラリスがゼロから考えだしたデザインのように描いているのも気になる所。
実際は当時大流行したアールデコを陶芸に取り入れたというのが正解で、そのアイディアは称賛に値するが、純粋にデザインとなると疑問が残る。
なのでどうしても「天才」という感じではなく「商売上手」にみえてしまう。
例えるなら「キャラクターグッズ」を最初に考えた人と同じではないのだろうか。
今作でも「売るため」の努力がほとんどなので、芸術性をあまり感じられないし、個人的にそれほど魅かれるデザインではない。
「こんな女性がいたんだ」程度の知識としてみると普通に楽しめる作品。
余談。
世の中には1920年代ごろのアールデコのマニアとか、もっとストレートにクラリス・クリフの収集家とかいるそうで、当時は「安物」として出たクラリスの作品だが、今ではなんと360万とかで取引されているそうだ。
陶器など壊れてしまうものが多いので、きれいに残っていると希少価値も上がるのだろう。
でも、作られた過程やクラリスの思考過程を考えると、コピー商品の方が作者の意図に当てはまっている気がするのだが・・・
まぁ、それを言い出したら多くの物に当てはまってしまうから、禁句なのかな。
日本で言えば、浮世絵とか根付とかと似た感覚なのかな・・・