ニャーニャット

PLAN 75のニャーニャットのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.3
カンヌで賞を取った時気になっていたんだけど、最近、成田氏が既得権益の集団自決で炎上したときにこの映画を思い出してアマプラで鑑賞。

高齢者が全体の投票権を多く占めるため、高齢者優遇の利益誘導を変えられないいわゆる「シルバー民主主義」的な状況でこのような法案が通る道理がよくわからず、すごい飛躍を感じるんだけど、この手の映画は「ガタカ」とか「TIME/タイム」みたいなアンドリュー・ニコルのSF映画と同種のある一つの社会制度がもたらす思考実験的SF映画だと思うのでその前提を問うのはナンセンスなのかな。
ただ、思考実験として考えると、希望としてはこういうディストピアな状況を打破する動きであったり、さまざまな動きを描いた群像劇として見たかった。背景的な描き方として制度に不満を抱えてそうな人は出てくるんだけど、基本的に老人側は割と行儀良く制度を受け入れていく人しか描かれない。

ただ、監督の意図としては、そちら側の人間ではなく、どちらかというとそういった状況に弱者を追い詰める無感覚な大衆に向けた映画を作ろうとしたものと思われる。河合優実が倍賞千恵子と電話で別れを告げた後、思い詰めた表情でカメラに目線を向けるところからもその意図が汲み取れる。そうやって普遍的に見ると世の中には同種の問題が広く深く横たわっている。特に貧しくなった社会では、弱者やマイノリティに不寛容になりがちなものだ。

保険を勧めるかのように自死に関する契約を結ばせる巧妙に隠された残酷さがすごくグロテスクで、そこがこの映画の白眉な部分だよね。なんか15分の電話カウンセリングだったり、10万円の見舞金だったり、本当に国会で政治的議論が行われて作られた制度のような感じが気持ち悪いくらいリアリティがあって、ますますグロテスクなんだよね。