ニャーニャット

セインツ -約束の果て-のニャーニャットのレビュー・感想・評価

セインツ -約束の果て-(2013年製作の映画)
4.3
ルーニー・マーラー演じるルースが、ケイシー・アフレック演じるボブに、妊娠を告げるオープニングシーンについて、ファーストカットは、太陽を背に歩くルーニー・マーラーの顔を捉えた逆光のカット。次のカットはそれを追いかけるケイシー・アフレック側からの視点に、つまり、カメラが回り込んでルーニー・マーラーの背中からの視点に移るんだけど、なぜかそのカットも逆光になってる。
なぜそれに気がついたかというと、逆光の太陽光が柔らかく縁取るルーニー・マーラーが幻想的なほど美しかったから。女性を美しく撮ることに拘った映画に駄作はない。
手持ちカメラでサクッと撮ったかのようなシーンなんだけど、しっかり映画的な作り込まれた嘘を仕込んでる。もちろんいい嘘である。
この映画はつまるところ、かくも美しいルーニー・マーラーに翻弄される男たちの話であり、そこの美しさの説得力というところが最も肝なのだから、もうこの映画は成功している。

観た時系列と作られた時系列が違うんだけど、「さらば愛しきアウトロー」と同様に銀行強盗の話なんだけど、社会的に逸脱した者だからこそ炙り出せるプリミティブな人間の美しさがあるよね。

あまり本筋と関係ないんだけど、ルーニー・マーラーがソファで横になりながら娘に子守唄を歌うシーンがあるんだけど、そのシーンにすごく意味ありげにドアのカットが挟まれるのね。なんかイヤな予感をさせるというか、ドアのカットが挟まるとその何カットか後に必ず人が飛び込んでくるもんだけど、そんなこともなくそのシーンは終わる。98分の上映時間でほんと無駄なカットが一切なく、美しいショットで物語が紡がれていただけに、このカットだけ妙に気になった。まあ逆にいうとそれだけ隙のない作品だったということでもある。