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ドント・ウォーリー・ダーリンのlotusのレビュー・感想・評価

3.2
主役は「ミッド•サマー」などに出演の、フローレンス•ピュー。

舞台はビクトリーという名前の都市。1950年代な雰囲気で、砂漠のど真ん中に集合住宅があり、同じ会社に勤める男たちの家族が住んでいる。朝になると、男たちはピカピカのアメ車に乗って、妻たちに手を振り、スムーズにターンを切ると、乾燥した大地を砂煙を上げながら出勤していく。

素敵な家具が置かれた家にピカピカのアメ車。若く美しい妻たち。なんの瑕疵もなく、滑らかで完璧な生活だ。

ちなみに、フローレンス•ピューの夫ジャックは、ハリー•スタイルズが演じてる。(グラミー&ブリット賞、おめでとう)

さて、舞台は1950年代の砂漠と書いたが、本当はどういうところなのかはよくわからない。女たちは50年代っぽい髪型に服装(たいていウエストが強調されたワンピース)を着ており、テレビはブラウン管で白黒。男は外、女は家、とはっきり分かれている。

おそらくアメリカなのだが、時折地震のような揺れが定期的にある。(地下で爆破実験のようなことをしているのだろうか?)

よくわからないところだけれど、出てくる人たちはアメリカン・ドリームの広告のような生活を送っており、何も問題がないように見える。

しかし、近くに住むある女性に異変が起こった時から、少しずつ異変が起きて生活が綻び始め、というのがあらすじだ。

異変の描き方は様々なのだけど、私が一番、ん?と思ったのが、ジャックがフローレンス•ピュー演じるアリスの代わりに夕飯を作るシーンだ。ポテトサラダを作ろうとするジャックは、あろうことかじゃがいもを生のままつぶそうとするのだ。

アリスは優しく、先にじゃがいもをレンジにかけないと、と諭し、ジャックはどうりでうまく行かないはずだね、と笑って料理を放棄して、2人はテーブルの上でセックスを始める。

いや、いきなり生のじゃがいもをつぶしてポテトサラダが作れると思ってるなんて、どういう思考回路だよ、と突っ込みたくなるが、これはあとで伏線として回収される。
(アリス、そこで突っ込まない?と思うけど、これも伏線回収される)

そう、ジャックは料理ができないのだ。自分で自分の食べるものを用意できないのだ。(ネタバレになるのでこの辺りの詳細は割愛するが、ナードなハリーを見てみたい人はぜひ映画を見て欲しい。意外とリアリティがありました)

完璧に思えた世界が、実は完璧ではないのかもしれない。そう気づいた時にアリスは必死に走り出す。完璧な世界の外を目指して裸足で走る。
このシーンはとてもよくて、フローレンス•ピューはとても存在感のある役者だなと思った。

もし完璧な世界というのが本当は自分のものではないのだとしたら?もし自分の実際の生活が惨めなものだったら、嘘でも完璧な生活に生きたほうがよいのだろうか?

映画の後半ではそんな問いかけがなされる。

映画の編集がもう少し滑らかにできた気がするけど(ややいろいろ詰め込み過ぎている気がした。完璧な世界のメッキが剥がれていく様を細かくいろいろ入れすぎな気がした。)、とにかくフローレンス•ピューの全力疾走がよかったので、星3+。
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