瓶底

僕らの世界が交わるまでの瓶底のレビュー・感想・評価

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)
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もーーー、ムチャクチャな親子。笑

母親の他者を救おうとする烏滸がましさに。息子の自己顕示欲からなる個人的な興味でしかない浅はかさに。何度も(気づいてくれ…気づいてくれ…!)という観客の祈りも届かず、大きく失敗してしまう二人をみて(あーーーーあ……ほれみたことか…)となる、そんな過程を着実に進めていく脚本が上手い。そして、ほんまにこういう人たちおるねん。ムッチャおる。キャラクター設定の解像度も高い。

父親の「お前らは自己愛が強すぎる」に対して息子の「自分は!?」という二つの台詞から分かるように、この家族、きっと全員が各々で自己愛の塊やねん。目の前の近親者にすら全く関心がない。
例えば「5秒待って!」と言う息子に対して、ほんまに5秒待っても来んから先に出発する母親。「ランプが点灯してたら入るな!」と言って父母の許可も取らずに自宅の壁にデッカイ回転灯を設置する息子。二人が食べたいかどうかも分からん料理を作っては振る舞う父親。家族内でも公共の場でも、コミュニケーションが下手すぎて見ていてしんどなる。(とはいえ父親のあのシーンは可哀想やった)

母と子、それぞれで失敗を経てやっと歩み寄ることが出来る、初めてリスペクトすることが出来る、そんな希望的なラストにホッとする。失敗や挫折を実際に味わわないと分からんことってある。ほんまに。

BGMが特徴的。爆音ギターからの爆音クラシック、かと思いきや、ゲーム『MOTHER』のような電子音楽。登場人物の交わらなさをBGMのチグハグさで表してるよう。

内容はサクッと観れるまとまりの良さ。でも原作はAudible 6部構成で5時間超の長編大作なんやて?しかもこの家族の30年を描いているとかなんとか。それを全部映画に詰めて観てたら最後のシーン、大号泣やったかもしれんなぁ。
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