このレビューはネタバレを含みます
自分勝手に家庭を捨てたくせに、死ぬとわかってから、恩着せがましいとも思える行動に若干腹が立つが、それこそ人間の当たり前の行動だよなとも思う。
妻と娘を捨てでも恋に落ちた相手を愛し、救いたいという気持ちは、身勝手とは言い難い。
自分の心のままに生きることも、呪縛から抜け出せず死んでいくことも、どちらも人間だからなし得る生き方なのである。
鯨には感情がないが、人間には感情がある。
それは人を傷つけることもあれば、何かの手助けになることもある。
人は誰かを完全に救うことはできないが、誰かを気にせずにはいられない、関わらざるを得ない。
だからこそ『人は素晴らしい』。
宣教師として人を導く存在でありながら、エリーに助けられ、チャーリーには聖書の文字上の教えをする姿が個人的には皮肉っぽさを感じてしまった。
エリーもあの歳で必死にもがきながらも、最後には父親からの愛を受け止めようと涙するシーンがグッとくる。
ラストで、チャーリーが白鯨と重なっていき、お迎えとも取れるような美しい光の中に照らされる演出が非常に綺麗だった。
全役者がそこに生きていて、ワンシチュエーションでありながら心に重くのし掛かるような見応えがあった。
正直、解釈がとても難しく、評価が高いだけにそこまで理解を及ばせることのできない自分へ少しガッカリしている。
もう一度観返して、深めていくこともしてみたい。
でもまぁ良し悪しの一言で決められないからこそ芸術作品なのであるから、こういう時もある！と色々な作品に触れて感性を養っていきたい。
