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ロストケアのRのネタバレレビュー・内容・結末

ロストケア(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

切なくて苦しい2時間だった。
単なる殺人鬼のお話でなく、介護を通して徐々に心を蝕まれた犯人が、自分のしたことへの罪悪感を他人で拭おうとしていたとも感じられた。
社会的弱者が介護をしている場合、救われたという表現はある意味正しいとさえ思えてしまう。
介護によって壊れた心身を助けるには、要介護者が全快するか、いなくなるかしか選択肢がないと考えてしまうからだ。
生活保護を受けられないと言われたシーンがそれをよく表現していたと思った。
逆に安全地帯にいるお金のある人間はお金で解決するという選択肢も生まれる。
相反する2人の言い争いは、あまりに心に響き過ぎて瞬きするのも惜しかった。

また、死んでほしくないと死んでほしいという考えが浮かんでしまう矛盾が非常に苦しく、抱きしめながら父親を殺害する様子が辛い。
出演シーンが15分もなかったと思われる(個人の体感です)柄本明の芝居がショッキングでインパクトがあり過ぎて…。
ボロボロ泣いてしまったけど、感動でなくて胸が締め付けられる痛さで涙が溢れた。

見たいものと見たくないものがあるかもしれないというセリフにあるように、目を背けたくなる題材だが、高齢化が進む現代こそ、この問題をしっかりと考えなければならない。
斯波のしたことは正しいとは言えないが、法や決まりで救えない人たちを、どうやって救うのか。
正義感や正解が一言で言い表せない。

劇場で観られて本当に良かった。
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