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生きる LIVINGのRのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

あっという間の100分で、久しぶりに、もう終わり?!と思えた作品だった。

他人から見えるその人と、その人が心で感じていることは異なるのだと改めて実感する。
可哀想な死に様も、当人にとっては幸せな瞬間だったりする。
それまでゾンビのように生きていた主人公が、生きようと決心してから人が変わったような行動力に胸を打たれ、最期まで全うしようという前向きで美しい姿が本当に格好良かった。
声にもハツラツさを感じられ、人の目をしっかり見つめる優しい眼差しがとても暖かい。
前半の劇作家との派手な夜遊びのシーンも良かったが、主人公には情熱を持って何かに打ち込むこそ『生きる』ことだったのだ。

最後のシーン、最初、警官は不審者と思ったピーターに声を掛けたのだと考えたが、あの時ウィリアムに声を掛けていればという後悔から話し掛けたのだとも思えた。
あそこであの警官の悔いも晴れて良かったと感じる。

また葬儀の帰りの車内、あんなに固く誓ったにも関わらず、日常に揉まれ結局同じ生活になってしまう。
それはごく自然なことで、毎日を常に情熱持って過ごせる人なんておそらくいないと言っても過言でないと思う。
これもまた、『生きる』ことなのかもしれない。
なぜ人間は忘れてしまうのか、心を蝕まれることなく生きていくにはどうしたらいいのか、『生きる』って、実は難しいことなんだよなとさえ思えてきてしまう。
そして、怒る暇がないというセリフが非常に印象的で、小さなことについイライラしてしまう自分が恥ずかしいと思えた。
毎日を精一杯生きていきたいと痛感させられる1本でした。

それにしてもビル・ナイはかっこいい…。
鏡の前で病気のことを打ち明けようと練習するシーンが切なすぎた。
マーガレットも愛嬌たっぷりで、とても可愛らしい。
他の市役所の面々も、いかにも!って感じで観てみて心地よかった。

原作である黒澤明監督の方はまだ観ていないので、この感動が冷めやらぬうちに鑑賞するつもりです。
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