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ザ・ホエールのmityのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0
小川洋子さんの小説『猫を抱いて象と泳ぐ』に出てくる廃バスで生活するとても巨漢の男性のことを、ふと思い出した。あの人は確か、とても優しい人だった。

恋人のアランを喪い、過食状態となったチャーリー。日常生活に支障をきたし、命も危険にさらしながら、それでも食べることを止めず、治療を受けることも拒み続けたチャーリーは、自分を罰するために命を削っているようだった。

死期が近いことを知ったチャーリーが最後に求めた、娘エリーに対する父親らしいこと。10年近く会ってもいなかったエリーを呼び寄せ、歩み寄ろうとするチャーリーに反抗的な態度で接するエリーの姿からは、何を今更という感じが伝わってきて、それはとても共感出来た。そして、『The Son/息子』のニコラスと重なった。

チャーリーの部屋だけで繰り広げられるチャーリー最期の5日間。それは、これからも続くだろうエリーの人生にとっても、大きな5日間だったように思う。チャーリーの1歩、歩み寄ったあの瞬間。エリーはチャーリーからの愛情をちゃんと受け取れたように思えた。


#37_2023
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