現代社会のギリシャ悲劇。
フランスで起こる暴動をリアルなドキュメンタリーを見ている気分にさせながらマッド・マックスのような味付けをした社会派アクション映画。
1カット撮影が凄まじくハリウッド映画のようにCGで繋いだ感がないのが好ましい。同業だから分かるけど、あんな恐ろしいタイミングで切らずに撮れることは奇跡に近い。凄いリスペクトする。
またメイキングを見ると街のギャングや住人と一緒になって作っているのが非常にリアリズムをもたらしていて、色々と驚異的な作品。住民が一体となり、ギャング団が仲良くなるなどフランスの貧困層マイノリティに貢献しているという事実が素晴らしい。
この作品はメイキング含めて見ることをお薦めする。撮影手法だけでなくフランスの社会問題の一端を垣間見ることで、本当のテーマが浮かび上がる。
ただ本編のストーリーは分かりにくい部分があり、特に最後に活躍する爆弾エキスパートの背景をボカしたのは意図的だろうが、もうちょっと調べたら分かるくらいにしたくらいが深みは増すと思う。こちらの勉強不足かもしれないが、実在の人物や社会問題から生み出されたキャラクターなら最高なのだが、あのままでは超自然的なキャラクターにも見えてきてリアリズムを欠いてしまっている。
さらに最後に犯人が分からなくて良かったとは思う。分からないままの方が、犯人そのものが我々の中に潜む猜疑心の象徴になるから。
だが、そんな難点もメイキングを合わせて観ることで、今、世界中で起きている権力VS市民の構造といつの時代にも起こる悲劇について考えさせられる力作。