ウルトラ・シンプル イズ ベスト映画。
黄金を掘り当てた元最強の軍人が荒野でナチスと戦う、というだけのストーリー。他にはない。
主人公は全く喋らない。
何も話さないが、その顔つき、肉体、古傷、動物を大切にする姿勢から、彼の悲しみや深みが伝わってくる。ほんの少し過去について語られただけなのに、その戦い方から生き様も分からせる。
どれほど荒唐無稽でご都合主義でも無言の男の、それまでの人生に思いを馳せ、戦争の残酷さを憎み、嘘の正義に胸が熱くなる。
究極に無駄を削ぎ落とし、限界まで研ぎ澄ませると、理屈はいらなくなる。
このキャラクターならば、あらゆるシチュエーションで周りの人間と状況しだいで後10本は作れそうな気がする。
ヒーローものが地に落ちた今、汚れにまみれた死神さえも英雄に見える。そんな時代になったことを、この作品が教えてくれる。