Masato

キル・ボクスンのMasatoのレビュー・感想・評価

キル・ボクスン(2023年製作の映画)
3.5

殺し屋でいることよりも母親でいることのほうが大変だと悩む伝説の殺し屋ボクスンさんを描いたアクション。

ジョン・ウィックとキル・ビルにインスパイアされたような作品。笑わせるようなダサい演出とシリアスな演出がいったりきたりする忙しい映画で序盤の編集もタランティーノみたいにヘンテコでクセの強い映画。あまり上手く行ってない気がする。

チョン・ドヨンのアクションやそれらの演出まわりは流石気鋭の韓国映画だけに素晴らしかったが、やけにかったるい話運びが残念。本格的なアクションが始まるまでに時間かかりすぎだし、母親としての物語も無駄に時間をかけすぎている。ドラマを主体としたいのが殺し屋のアクションを主体としたいのかがハッキリしない構成で中途半端に感じた。

奇しくも仕事一筋で娘のことを真剣に考えられず母親として四苦八苦する物語で、エブエブやフェイブルマンズなどの今年のオスカーノミネーションたちと似通った物語。殺し屋故に娘に対して嘘をついて正直になれない母親と、正直でいたいと願う娘の成長が対比して描かれるところは良かった。偶然。

アクションは韓国らしいハリウッドには存在しない面白いアクション演出で素晴らしかった。ジェームズ・ワンかのようにグワングワン動きながらの対複数戦闘シーン、壁一枚隔ててグルグル回りながらのアクションシーン。アイデアフルでユニークなアクション演出は新鮮で素晴らしい。

尺の長さに対して思ったよりもアクションの数が少なくて物足りなく感じたが、演技派であったチョン・ドヨンによるアクションは素晴らしい。シャーリーズ・セロンがアトミックブロンドで見せた衝撃と似たような感覚。

もっとアクションにフィーチャーして欲しかった感はある。物語の描き方もアクションの配分や量感、インパクトなどの総合的な観点で言っても、傑作「悪女」は越えられなかったな。
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