コマミー

アイ・アム まきもとのコマミーのレビュー・感想・評価

アイ・アム まきもと(2022年製作の映画)
4.1
【意地でも送る】



新潟県庄内地方のとある小さな"市役所"に所在する、亡くなった人を"お見送り"する係

通称「おみおくり係」

そこに1人所属する"牧本壮"は、聞き分けが悪く、時々融通が効かないが、亡くなった方を御見送りする事に関して極めて情熱的且つ徹底的に行おうとする男。
そんな「おみおくり係」だが、役所の人員不足などを懸念して、人数が少ないこの係の"廃止命令"が下されてしまう。
途方に暮れる牧本だが、その事前に送り込まれた"蕪木孝一郎"と言う男性の葬儀を最後の仕事として全うしようとする。




本作の原作である"ウベルト・パゾリーニ"…映画好きならば何処かで聞いた事ある名前である。
そう、本作の元はウベルトが自ら監督・脚本も務めた7年前に日本で公開された、「おみおくりの作法」である。英国俳優エディ・マーサンが、牧本にあたる人物を演じていた。そんな名作を日本映画化したのが、過去に韓国映画「怪しい彼女」をリメイクしたことがある、"阿部サダヲ"さんとのタッグでお馴染みの"水田伸夫"監督である。

「おみおくりの作法」はずーと前に鑑賞した事があって、今回のリメイク版を鑑賞するまで内容は忘れていたに近いのだが、不思議とリメイク版を観て鮮明に思い出したのだから、良いリメイクである事は間違いない。
冒頭のシーンから、私が好きだった主人公の"自宅のシーン"まで、隅々まで日本風に再現されていて凄かった。
主人公は"発達障害"を患っていて、いつも変に正直で時々話を聞いていない所も、阿部サダヲさん的に面白くアレンジされていて所々笑えた。ちなみにエディ・マーサン版は、どこか"寂しさ"もあったのだが、やはりそれは自宅のシーンで上手く表現されていた。
そして加えて、"満島ひかり"さんの演技が本作でもとても良かった。

改めて良いリメイクであったと言える。日本的な表現で、時に笑わせ、時に考えさせられる"自殺・孤独死"の現実そして"身寄りのない人の遺骨"の行先…牧本の行動力に驚かせながらも、それでも追っていきたくなるドキュメンタリーのような魅力を持つ原作なのだなと、この日本版で改めて思い知らされました。
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