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イル・ポスティーノのmomokaのレビュー・感想・評価

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
4.1
美しい友情と愛の物語。
情感溢れる音楽と、南イタリアの自然溢れる地で織り成される人間模様が心に響く。

祖国チリから南イタリアに亡命してきた著名な詩人、パブロ・ネルーダ。彼に届く大量の郵便物を配達するために臨時配達人として雇われた青年マリオ。ひょんなことから、彼らは詩を通して心を通わせるようになる。

「言葉の使い道を教えてくれた」
詩とは縁遠かったマリオが、ネルーダの影響で今まで気づきもしなかった身の周りの自然の美しさに思いを馳せるようになり、恋心を寄せる女性に対しても詩にのせて自らの想いを伝えるようになる。ネルーダに感謝の念を込めて告げたマリオのこの一言は、印象的だ。

切なさや、やるせなさが残るラスト。ネルーダを演じた、『Nuovo Cinema Paradiso』でも知られるフィリップ・ノワレが何も語らずとも見事にその想いを表現していた。

言葉は時として凶器にもなるが、本作を通してより美しい言葉とこの先は巡り会いたい、自らもそうした言葉を積極的に用いようという気持ちになった。詩はあまり読んだことはないが、口にするには難しいことも、詩にすることで人々の心を揺さぶるような作用を持っているのかもしれないと感じた。

凪のような穏やかな気持ちになりたい時にはぜひご鑑賞オススメ。日々用いる、ひとつひとつの言葉を大切にして生きようと思わせてくれる作品です。

余談になるが、マリオを演じた主演のマッシモ・トロイージは、心臓病を患いながらも撮影に臨み、クランクアップの12時間後にお亡くなりになったそうだ。心のこもった素晴らしい演技、とても良かったです。ご冥福をお祈りします。
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