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かがみの孤城のslowのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
4.4
【日本全国のぼっち諸君に捧げる
“ぼっちはきみだけじゃない。”】
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《あらすじ》
絶海の孤城に集められた7人の子供たち。そこで始まった鍵探しゲームをきっかけに現実世界と鏡の世界を行き来しながら徐々に打ち解ける7人。だが、とある“事実”が判明し事態は思わぬ展開に転がる。

本作がどういったタイプの作品かと言うと…

『心が叫びたがってるんだ。』
『思い出のマーニー』と同じ部類。

心を塞いだ日陰者を主人公にした作品で、全体的にしっとりとした雰囲気があり、夜一人で見るに適したメンタルセラピー映画のように私は感じた。

…というのも、本作は7人の子供が登場するが6人の物語はオマケ程度。
こころちゃんの物語が本作のメイン。
いじめシーンはもちろんあるが、物理的なイジメではなく辛辣な罵声でメンタルをズタズタに引き裂くもので、前半は見るのがしんどかった。

ただ中盤から流れが変わり、とある約束から判明する7人の驚くべき事実と息をのむスリリングな展開には目が離せられない。

終盤は「これぞ映画」
感動と激アツ展開による波状攻撃の嵐。
前半の陰鬱さを吹き飛ばす後半の怒涛の展開はめちゃくちゃ爽快だ。

私も同じく中学生時代に不登校を経験した身なので、本作で心の教室の先生が『不登校になったのはこころちゃんのせいじゃない』と言ったことに対する言葉の真意を確かめる場面、あそこで先生がこころちゃんにかけた言葉にはくるものがあった。

「だって、こころちゃんは毎日闘っているでしょう?」

【映画に隠された小ネタ】

本作は『オトナ帝国』と同じ監督作と言う事もあり、クレしんからのゲスト出演があったり、階段を一人駆け上がるクライマックスシーンにはオトナ帝国みを感じた。
また中の人の繋がり作品ネタなどいくつかのサプライズがあったのは地味に嬉しかった。

【総評】
個人のドラマとしては見応えあるが、謎を長々と引っ張っておいて明かされる答えがふわっとしてたり、7人のドラマの結末としてはやや消化不良だったり……真相と群像劇の部分で完全にスッキリしない部分はあるものの、“こころの物語”として見れば間違いなく傑作の部類といえる。

決して号泣系の感動モノというワケではなく、ウルッとくる所で止まるしんみりタイプなので陰鬱な気持ちをサラッと洗い流したい夜長に一人で見るのがおすすめ。
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