なぬ⁉︎これ6割方映画オリジナル展開なの⁉︎
原作を知らなかったので一応調べてみたら、主人公の本性から黒幕の正体、それに紐づく本来辿るべき結末まで、まるっきり劇場で語られた物語とは別物で驚いた。
これ、原作は「池井戸潤」作品お得意の"勧善懲悪もの"ではなく、メガバンクを舞台にした本格ミステリが売りの異色作だったらしく、今作には本来"倍返し"な展開は用意されてはいないのだが、映画スタッフの手によって"いつもの路線"に脚色を施して今作は作り上げられている。
それを踏まえた上で思い返すと、劇中で妙に違和感の残る流れやツッコミどころだったものが全て、そのオリジナル展開に捻じ曲げた事で引き起こされていたものだったのだと理解した。
どうりで、事件解決までの道筋がやたらと簡素だったり「玉森」の役どころが仲間の割に妙に重要度が低かったりした訳だ。
しかも、原作には今作のキーパーソンである「柄本明」が演じたキャラクター、出てこないんだぜ!
などなど、タイトルである「シャイロックの子供たち」の意味もいまいちピンとこなかったのもこの為だったのねと、その事実を知った今なら納得。
ただ、それら諸々を理解した上で、じゃあ原作小説の内容の方が面白そうだったかと聞かれたら、ぶっちゃけそんな事もない。
原作は原作で、結末がハッキリと分からないモヤモヤした状態のラストみたいだし、本当に作品としてのトーンが原作と今作とで全然違う感じ。
なので、池井戸潤といえばこれ!という展開を期待していたのであれば、むしろ劇場版の方がそれを見せてくれているっぽいので、正にそれを望んでいた身としてはこっちはこっちでも悪くはないという感想。
でも、やっぱり弱い。
ストーリーにサプライズが無さ過ぎて、始まりからなんだかずっと平坦な印象のままで終わってしまうしで、圧倒的にオチが弱いのだ。
劇場用作品で、しかも作品のトーンまで変えて原作から内容を改変したというのであれば、物語をゼロベースから作らず他人の褌で相撲をとっている以上、こういう作品は圧倒的なアイデアを以って作られるべきなのだ。
どれだけそれが難しくても、原作よりこっちの方が面白いじゃん!って言わせる責任が絶対にあるのだ。
人が作ったものに他人が手を加えるって、そういう事だと思う。
その点で言えば、原作を台無しにはしていないまでも、そういう心意気は感じられない作品だったと言わざるを得ない。
ただ、脚本家も「この原作の結末をいつもの池井戸作品のノリに変更して」みたいな無理難題を吹っかけられた立場の一人なのだとするならば、まあ心中はお察しする。