Nasagi

私のはなし 部落のはなしのNasagiのネタバレレビュー・内容・結末

私のはなし 部落のはなし(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます


若手の監督さんが部落差別問題について取材を重ねて撮ったドキュメンタリー。
上映205分の大長編。先々月にオンライン上映で鑑賞した『プリズン・サークル』といい、東風さんが配給する映画はほんとに尖ってる。

ここで具体的な地名をあげることは避けるけれども、地元のすぐ近くと、大学時代に下宿してた場所とが出てくるので、やはり他人事とは思えなかった。

これより長いドキュメンタリーも観たことがあるのだが、日本の問題であるということと、どぎつい差別表現が何度も何度も何度もでてくることから、本作にはとくに消耗させられた。
といっても映画の構成は丁寧で引き込まれた。

本作に登場してくれる当事者たちは饒舌であるが同時に、彼らにとって言うこと、伝えることはこんなにも怖いことなんだと思い知らされる。
部落出身というアイデンティティを引き受けながら、地元を離れずに悩み続ける若い男性(たぶん自分と同い年くらい)の姿がとても刺さった。

地元をはなれて就職した旧友にひさしぶりに電話してみると、その友達はいまでは自分が部落出身だということをあまり意識せずに日々を過ごせているのだという。
それを聞いたときの、男性のなんとも言えない表情。自分の人生に苦しみをもたらしてきた烙印であっても、それがあったからこそ知り合った人々もいて、それを抜きにして今の自分を考えることなどできない。

「部落出身」という属性はフィクションだが、それに基づく差別は現実のもので、そこを「選択不可能性」として我が身に引き受けて生きていこうとする彼の覚悟に震えた。
自分ならぜったい地元離れちゃうなぁ…(離れたからといって逃げられるわけでもないんだろうけど)
Nasagi

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