Nasagi

対峙のNasagiのネタバレレビュー・内容・結末

対峙(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

高校生が起こした学校での銃乱射事件から6年後。手紙でのやり取りを重ねてきた被害者と加害者それぞれの両親が、小さな教会の一室にてついに対峙する。

知り合いの人で、加害者臨床などをやっておられる方がいるのだが、その人が「これは公開されたらぜったい観に行く」的なことをSNSで呟いたはって知った作品。

銃乱射事件の遺族の話と聞くとなかなか身近には感じづらいのだが、自分の場合、2年半ほど前に事故で亡くなった学生時代の友人のことを自然と思い出しながら観ていた。

ご実家の方にもちょくちょく顔を出していてご両親とも色々お話するのだが、やはり会うたびにお二人の心境も少しずつ変わっていっておられるように思う。(とくに三回忌を過ぎてからは顕著に。)
以前はコロナ禍のこともあり、お二人とも家に閉じこもりがちで、なにかお金を使うとしても基本的に全て亡き子のために、という感じだったのが、最近ではそれぞれ自分の趣味の活動の幅を広げておられるみたいだ。
お母さんの方なんか、数年前からはまっているという某アイドルグループのライブに行くために、生まれてはじめて「遠征」なるものをしたと語っておられて、何よりだった。
お話をする実家のリビングだって、以前は訪ねていっても電気が点いてないから暗かったものだが、最近は照明もだいぶ明るくなったなと感じる。

そうした変化は、きっと時間がたつ中で自然と起きたものでもあると思うし、またご両親が意識して変わった側面も多くあるのだろうと、話を聴いていて思う。
それに、息子の友人の前でつとめて明るく振る舞っているというのもあるんだろう。

ある日突然、わが子を失う経験、そこに原因とか説明を求めたくなる気持ち、でも納得のいく答えなど得られないこと。
そういったことを、自分は想像することしかできない。友として彼に対して、後悔や感謝、尊敬の念を抱くことはあれど、その気持ちは、親が子に抱くそれとは別物であると思うようにしている。

映画のなかで、「彼」のために生前何かしてやれることはもっとなかったのかという問いが、何度も繰り返されていた。あるいは、「あなたたちは彼に対して、もっと何かすべきだったのでは」と。
そこに関しては、自分も形は違えど、同じようなことをずっと考えている。
また、たとえ死に繋がらなかったとしても、わが子とか大事な人に対して、そういったことを悔い続けている人も、知り合いにいる。

自分もこの映画の人たちみたいに、その問いの先のところまで行けるのかはわからないんだけど、なんとなくそうなっていける道筋みたいなのはちょっと見えたような気がする。 

なんとも抽象的な書き方になってしまったし、正直映画の方も、ずっと緊張感がつづいて疲れてしまい、十分読解できたとは言えないのだが、とりあえず一回映画を観て、この文章書けたのはよかったのかな~と思っている。
もう一回、何人かで鑑賞会みたいな感じで観たい映画。最後のほうの展開とかとくにちゃんと噛み砕きたい。
Nasagi

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