Nasagi

月のNasagiのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

自分も障がい者福祉に携わる人間の端くれで、
日常的に「重度障害者」(こう文字にするとなんか物々しくて変な感じがするが)の人たちと関わっている身だし、
これは観ようと思ってみてきたのだが。単に凄惨なシーンがあるという以上に、すごく嫌な映画だった。

「重度の障がい者を人として扱おうとしている健常者」を描くことと、
「重度障がいのある人を人間的に描くこと」は違うと思うのだけど。
その上で、この映画には、前者はあるが、後者の姿勢がないと感じられたので、そこが自分にはすごく嫌だったのだろうと。

あとは、なんか「明らかにクソみたいなこと言ってるのに、それでも現場を知ってる人の発言だから重みある」みたいなのもすげえ嫌いだし。

「自分もこういうブラックな環境にいたら、ブラックに染まっていくのかも」と考えさせようとしてるのはわかるんだけど、それとこれとは話が別やでな。
自分も働いてて利用者さんにぶん殴られたり、う○こ擦り付けられたことあるけど、
だからといって自分が何か障害のある人を軽んじるようなことを仮に言ったとして、それで
「うんうん、大きな声では言えないけど、「現実」を知ってる人のことばだから一理あるよね…」とかなるかと言えば、そんなわけねーだろって感じだし。

ニヒリズムと露悪趣味がないまぜになった「現実」という言葉の使い方。これも嫌。
「現実見ろ」って言う人のいう「現実」、めっちゃ単純化されてて、あんたこそむしろ現実の多様性見えてないんちゃうかと。
そりゃあの事件そのものは現実に起こったことやけど、その犯人の主張の中身まで「現実」を捉えてると思う必要ないでな…
全体的になんか、あの犯人の土俵に乗っかって考えすぎなのではと思ったな。

あとはまあ、だれがどう見てもその犯人をモデルにしているとわかる人物の描き方かな。
名前のつけ方もひどいし、そういう風な病気の描写はあかんやろと思ったり。

はたしてこの映画が、障がい者や福祉への理解を深めるものなのか、疑問に思わざるを得なかった。
Nasagi

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