チッコーネ

だって私は女なののチッコーネのレビュー・感想・評価

だって私は女なの(2021年製作の映画)
3.5
共産主義時代のポーランドに咲いた妖花、カリーナ・イェドルシクの伝記映画。
本人の姿を模しながらアンナ・カリーナも彷彿とさせるスタイリング、ポップでカラフルな美術、そして効果的に挿入されるミュージカル場面は洗練されており、楽しく観れる…、特に「拒絶」の受難を表現したダンスは印象に残った。

セクハラに立ち向かう姿を描きつつ、全く凝りない高慢な性格を同時に描き出すなど、無駄なヒロイズムを排した演出は好印象。
日本やアメリカで同じ題材を撮ったら、こうはいかないであろう。
私生活では夫と愛人との共同生活を送るなど、やりたい放題の彼女だったらしいが、当時の新進作家であった夫にも、別の妻がいたらしい。
また妻以上に親密な男友だちがいるという描写は、どこか意味深だった(穿ちすぎかも)。

カリーナを演じたマリア・デブスカの妖艶で豊満な実存も素晴らしく、久々に女優らしい女優を観た思い。
劇中歌はすべてカリーナのオリジナル、早速ベストアルバムをDLしてみた。
全盛期は60~70年代のようだが、意外にも表題曲以外のアレンジはほとんど、オーソドックスでシアトリカルなオーケストラジャズで統一されている。
舞台女優出身というバックグラウンドゆえか、はたまた共産主義国ゆえか。
ポーランド人作曲家のメロディもエキゾティックだったので、時間をかけてゆっくり味わいたい。