橘

夢の橘のレビュー・感想・評価

(1990年製作の映画)
4.1
「死神に名刺貰ったってどうしようもない」(もし病気で余命宣告されるなら病名告知前に言ってみたい台詞ナンバーワン)

夏目漱石の作品で一番好きなのは「夢十夜」なので、黒澤明が「こんな夢を見た」をやるなら気に入ります…好みのお話そうでもないお話はありましたが、好きな映画でした。
「日照り雨」「鬼哭」「水車のある村」が特に好き。

「日照り雨」
人ではないものに人の理論は通用しないし子どもだからと容赦もしてくれないので、命をかけて謝ってきなさい、と突き放されるのがなんだか納得でした。母が悲しんでない訳ないけど、狐は憑くとたいへん。
しんどい…と思いつつ、それでも、狐が棲むという虹の下は美しく見えました。

「鬼哭」
長さん!長さんのお芝居大好き。
火の鳥っぽさありました。

「水車のある村」
「本来、葬式はめでたいもんだ。よく生きて、よく働いて、ご苦労さんと言われて死ぬのは、めでたい」
「あんた、生きるのは苦しいとかなんとか言うけれど、それは人間の気取りでね。正直、生きてるのはいいものだよ。とても、面白い」
笠智衆さんの台詞聞いてるときの寺尾聰さんがなんだか嬉しそうな顔してるのが心に残りました。寺尾さん出てくる3話からシリアスなお話ばかりだったからかなぁ。
「ご苦労さん」と自分でも思えて、周りからも思われるのが、良い人生の幕引きなのかも。彼岸に行くのも「行ってらっしゃい!」みたいな。葬送曲はロタティオンで是非。。。と言いつつ、Coccoの「海辺に咲くばらのお話」も流してほしい。


美術もワダエミさんの衣装も色彩が氾濫してて好きでした。
自然を讃えて、自然を制御できると思ってる人間の愚かさも描きながら、でも黒澤明って作品のために景色にかなり手を加える監督な記憶があるけど…と思うなどしました。
スコセッシ監督のゴッホは…うーんヴィンセントが英語………と思ったくらい。
橘